novel | ナノ





□糖分の摂取のしかた□





















「不動、」











嫌だ。言わないで、止めて。

そう言って止めさせたいのに喉はカラカラに渇いて、言葉が詰まって声が出ない。

その言葉を聞いたら、俺は、









「俺は」















鬼道のことばひとつで、壊れていくのが怖い。

だって俺は、こんなの、知らない。












あの日から世界はピンク色。自分でも気持ち悪いぐらい。

気持ちがフワフワしている。

浮かれているのは周りの奴らには気付かれていないはず。

いや、気付かれていたらプライドが許さない。







「ふ…不動…」








鬼道ちゃんが顔を真っ赤にしながら俺の名前を呼ぶたびに心臓が痛いぐらいに高鳴って息が苦しくなる。


あの日からずっとこんな調子だ。
俺は随分こいつにほだされているみたい。

嫌なはずなのに、ちょっとだけ喜んでいる自分がいる。





「何だよ?」




思ってたのより優しい声が出た。
なんか俺じゃないみたい。


嘘みたいだ。俺と鬼道がこんな関係になるなんて。









「その……」


「うん?」


「……キス、していいか」








なっ、なななななな急になに言ってんだ鬼道くん。

顔が異常に熱くなってるのがわかった。


こんなんで照れてる自分が気持ち悪い。








「駄目、か」


「別に……いいけど?」












本当か!?なんて顔を輝かせる鬼道ちゃん。

なんでおまえはそんなにかわいいの。


かわいいかと思ったら今度は真面目な、めちゃくちゃにかっこいい顔して。

ああああ、どきどきする。









「不動……」










おれたちのはじめてまではあと何秒かなあ














(いくらもらってもたりないかもね)