novel | ナノ


※不佐久です。
でもあきおちゃんが襲い受けにも見える。
女装注意
微裏







なんでこんなの着なきゃいけないんだろーねえと不動は不満そうに言って、沢山のフリルがあしらわれたスカートの裾をつまんだ。
ここは帝国学園男子サッカー部の部室だ。
そこにメイド服に身を包んだ野郎が二人。
何が楽しくてこんなことをしなければならないのか、と佐久間は心の内でぼやいた。
所謂罰ゲームというやつで、不動と佐久間は女装させられることになってしまったのであった。
視線を感じて不動を見れば、不動はじろじろと佐久間を見ていた。

「なんだよ?」

「…違和感ねえー」

けらけらと不動は笑った。
その言葉にムッとする。
確かに女顔だってはよく言われるし、髪も長いけど。
身長はそれなりにあるし体格だって別にひょろひょろしていないし(源田には負けるが)俺はれっきとした男だ!!
そんな佐久間をよそに不動は、器用にくるくると回ってみせた。

「スカート短けー…パンツ見えんじゃん」

さっすが成神、と不動はまた笑う。

「源田あたりにやらせればよかったのに」

「さすがにそれは視覚的にアウトだろ…」

「ウケ狙うなら源田のほうがいいじゃん?」

そこで佐久間は不動をまじまじと見た。
確かに髪の毛はメイド服に合わせるには不釣り合いだが、小柄だし、脚は綺麗だし、色白で割と似合っていると思うのだが。
それを口に出せば、不動はフーン、と興味無さそうに言う。
そして腕を組んで、一言。

「お前あたまおかしいんじゃねぇの?」

「なっ………!」

ムカつく。どうしてこういうことしか言えないんだ。
俺がせっかく褒めてやったのに。
佐久間はつい、いつものように不動に乗せられてしまう。

「なんでそんなこと言うんだ!!ちょっとぐらいは喜べ!」

「んなことで喜べるか、バカ」

「うるさいハゲ!!」

佐久間は悪態を並べ立てる。不動に反撃されないように、だ。
反撃されたら勝ち目なんてないんだから。
不動はそんな佐久間を見て、はぁ、と心底呆れたようにため息を吐いた。

「うるさいよ、お前」

「お前が悪いんだろ!?大体な―――」

「うるせぇ、って言ってんだろ」
ずいっと不動は顔を近付けてきた。近い近い近い近い近い近い近い!!!!
佐久間の心臓は早鐘を打つ。
不動は可愛げのない釣り目をきゅっと細め、口の端を上げてニヤリと笑った。
かわい、佐久間の鼻先で呟いて噛み付くように口付けた。
驚いて半開きだった咥内に不動は舌を侵入させて犯す。
酸素不足で頭がぼうっとして、力が抜ける。
そんな佐久間を不動は強すぎない程度で押す。
ドン、ガタガタッ。
うわ、と佐久間は声を上げて、おもいっきり尻餅をついた。

「な…なにす……うあっ」

不動がいきなり首筋に顔を埋めてきたので、ビクリと身体を震わせる。
今度は首筋に唇を落とされて鼻に掛かったヘンな声が出た。
不動は耳元でぼそぼそとしゃべる。

「だって……我慢できねーって。こんなん」

「だ、だからって……や、あ」

「最初ヤダって言った割にはいっつも嬉しそうに啼くくせに」

俺のこと大好きだもんなぁ、佐久間チャン?
そういって、目の前でまた、ニヤリと笑う不動。
背筋がゾクリとした。
佐久間は観念したように息を吐いた。
それを行為の肯定と受け取ったのか、不動は身体を近付けてきた。
不動の体温を感じて佐久間は目を閉じた。
不動は佐久間の太股にゆっくりと手を這わせた。

「んん……不動……」

「…やらしい声」

クスクスと笑い声が聞こえた。
佐久間は腕を不動の背中に回し――――――「佐久間、不動、着替え終わったか?」

ガチャリ、ドアノブが回され、現れたのは鬼道だった。
一瞬ポカンとしてから、鬼道は湯気でも出そうなぐらいに真っ赤になった。

「なっ、なななななおま、おまえ、お前たち」

「どうしたー鬼道………っ!?」
横から顔を覗かせた源田も顔を真っ赤にして息をのんだ。
後ろからぞろぞろと他のメンバーもやってきて、反応は様々だ。
鬼道は叫ぶように言う。

「そっ、そういうことはせめて寮の自分の部屋でしろ!!」

「…しょーがねえなあ」

「………はあ!?」

今度は佐久間が叫ぶ番だった。
不動は佐久間に向き直って、触れるだけのキスをして、言い放った。

「部活終わってからのお楽しみ、な」

「おい、ちょっと…!」

「ほら、立てよ、行くぞ」

きどーちゃんには逆らえねーよと言いながら不動はさっさと部室の外へ。
佐久間は絶句した。


その後練習中に佐久間が打ったシュートが逸れて、不動の顔面に命中した結果大喧嘩になったとかならなかったとか。