novel | ナノ




ぼくらの休日





いつもの待ち合わせ場所の喫茶店。その店の落ち着いた雰囲気が二人のお気に入りだった。
店の中に入ると、いつもの席に不動が座っていた。


「すまない、遅れた。」

「遅せーよ鬼道クン」


不動はそう言ってけらけらと笑う。不動の私服はスッキリとしていて、シンプルなのに良く似合っていて好きだ。
そのまま向かい合う椅子に座る。

「久々のデートなのにスーツかよ」


口ではこう言うがどことなく嬉しそうに目を細めた。


「ああ…今日やらなければいけない仕事があってな……」

「そっか、」


ご苦労様、と言って不動はカップに口を付けた。目を伏せると長い睫毛がより際立つ。綺麗だ。


「鬼道くんは何か飲まないの?」

不動の声で我に返る。どうやらじろじろ見すぎていたようだ。
俺は少し考えてから、店員を呼んだ。


「時間はいっぱいあるからちょっとゆっくりしてこ?」


今日は不動の機嫌が良い日のようだ。









今日は不動が買い物をするのに付き合うことになった。
不動は手元にあったサングラスに手をかけた。


「なにを買いに来たんだ?」

「んー、別に何も?」


急に視界が暗くなった。サングラスを掛けられたというのに気付くのがちょっと遅くなった。
そんな俺を見て、不動は腹を抱えて爆笑する。


「そんなに似合わないか」


眉を寄せるとさらに不動は笑う。

「さ、サングラス掛けたらさらにアブナイ仕事の人に見えるな、って、っくく」


ひー、うける!と不動はまだ笑い続けているので、ぺしり、と頭を軽く叩いてやった。
不動は、大げさに、いってぇ!!と叫びながら笑いすぎたせいで出てきた涙を拭った。


「まあ、鬼道くんかっこいいから、それかけてたら女とか寄ってこなくていいかもな」


不動は首を傾げて、買ってやろうか?と問う。
顔に熱が集まってくるのがわかった。


「あ、あまり恥ずかしいことを言うな………」

「…………きどーくんかわいー……」


不動もちょっとだけ赤い顔で言った。


「次はこっち、な」


ふい、と顔をそらして、俺の手を引いた。
そこは雑貨屋のようだった。


「不動は何を買いに来たんだ」

「だからー、特に何もないって」

不動はたまにこういうところがある。
特に意味のないことをするのが不動は好きなのだ。
俺には何が楽しいのか、良くわからない。


「マグカップ買おう。お揃いのやつ」


不動はにっと笑った。歳の割には幼く見える笑顔。
その指は緑と赤のマグカップ。
良く知らないが奇抜なキャラクターの絵が入っている。


「鬼道くんは緑のヤツね」

「………新婚みたいだな」

「ばっ……………!」


不動は驚いて持っていたマグカップを落としそうになっていたのを慌てて持ちなおした。
そして、じとっと俺を睨んだ。


「レ、ジ…行くぞ」

「ああ」


自分の頬がだらしなく緩んでいるのを自覚した。
さて、どのタイミングで一緒に暮らそうと言い出そうか思案しながら、不動の後をついてレジに向かった。














4200キリリクでしたっ!
鬼不の甘いの以外に指定がありませんでしたので、好き勝手に書いてしまいましたが、良かったでしょうか…。
可鈴様のみお持ち帰り可です。