novel | ナノ

鬼→不です。

きっと二人は雷門にいるはず。

バレンタインねた。














がたっ、と教室の扉を開ける。
時刻は五時半、すでに皆は部活に行っている時間だ。
教室にはオレンジ色の夕日が差し込んできていていつもとは全く別物のようだ。
その空間に一人、彼は机に向かっていた。

「あっれー、きどーくん?」

妙に間延びした声で不動明王は声を発した。

「部活はー?」

「お前を呼びにきたんだ。それにしてもお前、なにをしているんだ?」

「宿題。俺いっつもサボッてるから残されたー」

唇を尖らせ、不服そうに言う。
その顔が存外かわいらしかったので鬼道は赤面した。

鬼道は、ふと不動の机の横にかかっている紙袋を見た。
その紙袋の中にはたくさんのかわいらしい袋で溢れかえっていた。
そんな鬼道の視線に気付いたのか不動はニヤッと笑って言う。

「モテモテ鬼道くんはバレンタイン、何個もらえましたか?」

不動は顔は整っているし、FFIのときを境に雰囲気が柔らかくなったので、女子の人気は高い。
当然といえば当然の現象だろう。
でも、

「いや、俺は一個も貰ってないぞ?」

こんなに苦しいのはなぜだろうか。

鬼道の言葉に不動は本気で驚いたようで、目を大きく見開いた。

「え、うそ。まじ?」

そう言うと不動は堰を切ったように同じクラスや隣のクラスの女子、はたまた1つ上の学年の女子(名前を聞いたことすらなかった)の名前を並べ立てた。

「そ、そんなに居たのか……。」
不動はうんうんと頷き、本当に来なかったの?と訊いた。

「ま、まぁ全員ではなかったが……だが、全部断ったんだ」

「はああああああ!?勿体ねぇやつ!!」

大袈裟に驚いた不動に鬼道は苦笑する。

だって、例え彼女たちの愛情がこもっていても俺には何の価値も見出だせない。
そんな自分はそれらを受け取る資格なんかないのだ。
だって俺は、何十個のチョコレートよりもたった一つのチョコレートが欲しい、なんて。

「なあに、鬼道くんは本命がいるってこと?」

今度は不動は楽しそうにしている。
ああ、

「まあ、そういうことだ。

貰えるなんて期待はしてなかったがな」

驚いた顔もいいがやっぱり笑っている顔が一番かわいい。
末期だ。

「へえ、そんなやついんの?

鬼道くんが好きなのにくれないのかー」

そんな女居るんだな、と不動は笑った。
どうしてそんな言い方をするのか疑問に思った鬼道は不動に訊いてみることにした。

「え、だって鬼道くんかっこいいし、頭良いし、ボンボンだし」

最後の言葉はどうかと思うが、ついどきりとしてしまう。
意中の相手に誉められるのは嬉しいものだ。

「俺が女だったら渡してやるのになぁー、玉の輿狙えるし」

女だったら、という不動の言葉が突き刺さる。
やはり、男であるお前を好いているというのはおかしいことなのだろうか。
鬼道は打ち明けたくて仕方がない。
それはお前のことなんだと。

「は、お前、なに………」

「へ?あ…………」

鬼道は気付いたら不動に覆いかぶさるような体制になっていた。
不動の顔が、目の前に。

もう自制心なんて捨ててしまおうか。

鬼道は躊躇なく目の前の不動の唇に自分のそれを重ねた。
目を閉じていても相手の動揺が伝わった。
どうにかして逃げようとする手は手首を握って自由が効かないようにする。
軽く唇を啄むと、ん、と小さく不動が声を上げた。

「不動」

唇を離して名前を呼べば、不動は眉を寄せて鬼道を睨み付けた。


「どうやら俺は、チョコレートよりも良いモノを貰えそうだ。」


鬼道は口の端を上げてニヤリと笑ってやった。












gdgdバレンタイン小説でしたっ!!
こっそり続きは書いてますはい。
書くのに飽きなかったら書きます!←