言えないんだ。どうしても。


アイ ラブ ユー ?


「ダージリンでいいかな。」
「……ああ、ありがとう。」

何かを考え込んでいる様子のデスコールの前に、淹れたての紅茶を静かに置いて。
こちらを見てくれない彼にため息を吐く。

私たちは、所謂"恋人"という関係にある。
ほんの、1ヶ月前から。
告白、は、彼からであった。
いつものように突然やって来て、突然抱き締めてきて、そして突然、

『好きだ。私と付き合ってくれ。』

なんて耳元で囁いて、更にきつく抱き締めてきたのだ。

驚き過ぎて声なんか出なかったけれど。きつく抱き締められていて顔も見ることもできなかったけれど。
彼の早鐘を打つ鼓動が、彼の言葉が本気であることを訴えていて。
私の早鐘を打つ鼓動が、私の気持ちを表していた。

だから、静かに、頷いた。



それから1ヶ月。

未だに私は、彼に「好きだ」と言うことができない。

「…はぁ……」

彼は毎日のように研究室にやって来る。
チャンスは有り余るほどあった。
彼を好きだとも思っている。
彼と話すのは楽しいし、愛を囁かれる度に顔は真っ赤になってしまう。
それをからかってくる彼に仕返しとばかりに抱き付くと、余裕綽々だった顔を真っ赤にして慌てる彼が可愛くて…じゃない、私は何を考えているんだ…!

「はぁ…///」

またひとつ、ため息を吐いて彼の後ろ姿を見つめた。






「ダージリンでいいかな?」
「……ああ、ありがとう。」


コトリと目の前に置かれた紅茶。
考え事をしていても耳に入ってくる、心地好い彼の声。

この空間が好きだった。
日陰者の自分に、こんな場所があっていいのか。
そんな自問自答はとうの昔に止めた。

誰になんと言われようと、彼を手放すつもりはない。

…と、それはいい。
今、思考を支配しているのは…彼にどうやって好きだと言わせるか、だ。

付き合い始めて早1ヶ月。
この研究室には毎日のように訪れている。…が、ただの1度も、そう1度も、彼から好きだと言われたことがない。

…そこ。嫌われてるとか言うな。泣くぞ。

思えば、告白したときにも、彼は頷いただけで一言も言葉を発さなかった。
顔を真っ赤にしてしがみついてきて、その様子といったら可愛い過ぎて鼻血が出るかと…じゃない、そうじゃなくて。

好きではないのでは、と疑ったこともある。
が、浮かんですぐにその可能性は消えた。

告白した翌日、やって来た私を見てあれだけ真っ赤になっておいて(それはもう耳から首筋に至るまでりんごのように真っ赤だった)好きじゃないなんて、あり得ない。

そうとなれば、あとはどうやってエルシャールに好きだと言わせるかだが…その前に。

「どうしたエルシャール。百面相してため息まで吐いて。」
「へ!?いや、あの…何でもないっ///」

さっきから、微笑んだかと思えば頭を抱えたり赤面したり。

何を考えているのかは知らないが、

「そんな可愛らしい顔をしていると、襲うぞ?」
「っ!!///」
「ふふふ…」

いつもより素直な反応だ。赤い顔が可愛らしい。

素直……今…今なら、言ってくれるだろうか。

「エルシャール。」
「な、なんだい///」
「私のことを、どう思っている?」
「!!!」

とたん、ぴしりと固まってしまったエルシャール。
口をぱくぱくとさせて、真っ赤な顔をもっと赤くして。

「な、え、あの…な、なんで急に…///」
「…私は君が好きだ。大好きだ。世界で一番君を愛してる。…君の気持ちが、知りたいんだ。」
「〜〜〜っ!!////」

さあ、言え、言うんだエルシャール!!
私だって恥ずかしいんだぞ。
羞恥で若干熱くなり始めた頬を無視して、彼の瞳をじっと見つめた。






「私のことを、どう思っている?」

心臓が止まったかと思った。
彼が考え事をしているのをいいことに、悶々と考えこんでいたら、急に声をかけられた。

しかも、くるくると表情が変わっていたらしいのを、見られていた。上に、ため息まで聞かれていたらしい。

わたわたとあわてているところに、恥ずかしい言葉を囁かれて、頭はもうパニックだ。

そこに、先の、爆弾発言。

丁度考えていたことを聞かれ、パニックを通り越して停止寸前の脳を無理やり動かして、問い返してみた、ら。

「…私は君が好きだ。大好きだ。世界で一番愛してる。…君の気持ちが、知りたいんだ。」

更に恥ずかしい言葉で返されてしまった。

もう、脳はオーバーヒート寸前だ。

心なしか彼の頬が赤いのが、唯一の救いだろうか。

声を出せないまま、口だけをぱくぱくと動かしていると。

「…やはり、嫌い、か?」

しゅんと俯いて、悲しげな声でそう問われ。
否定しようとして、言ってしまった。


「好きだよっ!!///」


はっと気が付いた時には もう遅い。
ばっと顔を上げて、しっぽが見えそうなほど嬉しそうに、

「言ったな?本当だな?」
と詰め寄ってくる彼に、図られた、と気付いたときにはもう抱き締められていた。

「やっと、言ってくれたな。」
「…悪知恵の働く大型犬のおかげでね。」
「ほう。その大型犬とやらに感謝しなくてはな。」
「ばか…」

少し離れて、目を合わせて。

「好きか?」
「…好きだよ。」

静かに、口付けを交わした。



アイ ラブ ユー ?
(大好きだよ)(世界で一番)


大好き、ジャン。
なっ…///

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瑞穂様から頂きました相互記念!

何で瑞穂様の書かれる二人はこんなにも可愛いんでしょうかねほくほく!
なかなか好きって言えない教授美味しい!演技派な科学者美味しい!最後の仕返しも可愛らしすぎて毛根がぱーんした(^P^)
本当にありがとうございました!

これからもよろしくお願いします^^


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