今日は講義がお休みで、アロマさんはレミさんの所に料理を教えてもらいに行ってるから、僕が先生を独り占めできると思っていたんだ。だから先生の部屋のドアを開けた瞬間、僕は叫んだ。


「どうしてクラウスさんが此処に居るんですか!」

「いきなりどうしたんだいルーク君。僕は先生に会いに来ただけだよ」


何故か先生の部屋で優雅に紅茶を飲んでいたクラウスさんにそう尋ねれば、さらりと爽やかに返された。


「やぁルーク。君にも紅茶を淹れようか?」


先生の手前帰れこの似非爽やか!とも言えず唸っていれば、先生がそう言ってくれたのでこくりと頷きクラウスさんと先生のイスの間にイスを移動して座った。(どっちにしろ3人だからクラウスさんは先生の隣に移動した)


「あ、先生!そういえば僕今日美味しいお茶菓子を持って来たんです!」

「おや、それはありがたいね。今開けても構わないかな?」

「はい!」


先生の淹れてくれた紅茶の香りに、母さんに持たされたお茶菓子が鞄に入っていた事を思い出し先生に渡せば、これは紅茶に合いそうだね。と微笑んでくれた。


(可愛い…!)


ふんわりと微笑んでお茶菓子を用意する為お皿を取りにいった先生を見つめていれば、ちょっとルーク君。と声を掛けられ仕方なく振り向いた。


「なんですかクラウスさん」

「物で釣るなんてズルいじゃないか」

「釣るだなんて人聞きの悪い!いつも紅茶をご馳走になってるから、お礼に持ってきただけですよ!」


むすっとした顔でそう文句をつけてきたクラウスさんに英国紳士として当然の事です!と返してやれば、ぐっ…と悔しそうな顔をされた。自称英国紳士のクラウスさんの事だから、何か高い菓子を持ってくるべきだったとでも後悔しているんだろう。


(いっそ菓子を取りに戻ってくれればその間に鍵という鍵を閉めておくのに)


後悔真っ只中のクラウスさんを横目にはぁ、と一つ溜め息をついて視線を先生に戻そうとしたのだけれど、肝心な先生が見当たらない。


「あれ?先生?」


横でブツブツ言ってるクラウスさんを放置して先生を探すけど、やっぱりそこに先生は居ない。


(おかしいな…お皿なら此処にあるのに)


疑問を浮かばせながら食器棚の前で首を傾げていると、玄関の方から声が聞こえた。先生と、誰かもう1人の声。聞き覚えのあるその声にまさかと思い玄関に急げば、そこに居たのは予想通りの人物だった。


「父さん!?」

「お、ルークか」


ちゃんと茶菓子は渡したか?と笑う父さんに何で此処に居るのと問えば、当然のようにレイトンに会いに来たと返された。本日二度目のそのやり取りに溜め息しか出ない。母さんも僕も居るっていうのに、本当に駄目な大人だと思う。


「そうだ。折角だからクラークも紅茶を飲んでいくかい?ちょうどルークから貰ったお茶菓子を開ける所だったんだ」

「えっ」

「ああ。それじゃあお言葉に甘えて」


談笑しながら先生の後ろを歩く父さんに甘えるなこの駄目人間!と叫びたかったけど、やっぱり先生の前でそんな事は言えないので心の中だけで叫んでおいた。





「先生、紅茶のおかわり淹れますね!」

「ああ。ありがとうクラウス」

「美味いか?レイトン」

「うん。私好みの甘さだよ」


いつの間にか復活したらしいクラウスさんと僕の席を占領した父さんに笑顔を向ける先生は相変わらず鈍感だ。まぁそのお陰で先生は今の今まで無事でいられた訳だけど、ここまで鈍感だとちょっと質が悪い。


「うぅ…」


(男は皆オオカミなんですよ!)


父さんの隣の椅子に腰掛け菓子を頬張る。先生と2人っきりの予定だったのにとんだ邪魔が入った事にむすっとしていれば、優しい先生はどうしたんだい?と声を掛けてくれる。それだけでなんだか幸せになれてしまう僕は本当に先生が好きなんだなぁと思う。


「あのっ!先せ」


ばたーんどたどたがちゃっ!


「教授ーっ!」

「レイトン先生!」


神様は本当に意地が悪いと思う。折角僕が先生と喋ろうとしたのに、丁度狙ったように2人が帰って来ちゃうなんてタイミングが悪すぎる!


「おや、アロマ。今日はレミの所に泊まる予定じゃなかったのかい?」

「ええ。そうなんですけど」

「私、上手にスコーンが焼けたので先生に食べて貰いたくて!」


そう言ってアロマさんが差し出したのは確かにスコーンだった。形は少し崩れているけれど確かにスコーン。紫色じゃないしフォークも刺さってない。いい匂いだし美味しそうなスコーンだ。先生はそれを見てありがとうと微笑んだ。(内心安堵しているようにも見えたけど)





「はぁ…」


もう何度溜め息を吐いたんだろう。とにかく幸せはとっくに逃げ出した筈だ。先生を独占できる筈だった今日は見事にお茶会になってしまった訳だし。こういう日に限って敵が集まるんだから。


(でも…先生が楽しそうだからいいや)


ふふ、と楽しそうに笑う先生を見てそう思い、それなら僕もこの時間を楽しもうとスコーンに手を伸ばした。が、お目当てのスコーンはどこからか伸びてきた手にするりと攫われてしまった。


「ああっ…僕のスコーン!」


スコーンを攫った手の主を見ようと顔を上げれば先生の後ろでスコーンを咀嚼する仮面の男。


「少し甘いな」

「でっ…デスコール!!?」


突如そこに現れたデスコールに驚いたのも束の間。デスコールは椅子から先生を抱き上げた。所謂お姫様抱っこだ。


「うわっ、デスコール?」

「やぁエルシャール。ご機嫌いかがかな?」


横抱きにした先生に顔を近付け笑うデスコールに、勿論皆黙ってる筈がない。


「先生を離せデスコール!」

「デスコール!教授を離しなさい!」

「レイトン先生を返して!」

「またお前かデスコール!レイトンを降ろせ!!」

「僕の先生に触るな!」


クラウスさんの発言には間違いがあったけどとりあえずそれは後回しだ。今は先生をデスコールから取り戻さないと!

しかし誰かが行動を起こす前に、デスコールは流れるように窓枠に足を掛けると此方を振り向きにやりと笑ってみせた。


「騎士の諸君。姫君は私が頂いていこう」


よく通る声でそう宣言したデスコールはレイトン先生を抱えたままふわりと外へ飛び出した。その後をレミさんがすぐに追いかけ、クラウスさんと父さんとアロマさんも何か叫びながらどたばたと部屋を走り去っていった。


僕はといえば、最後にデスコールと先生を見た場所から動かずにいた。いや、正確に言うと動けなかった。


だって見ちゃったんだ

デスコールの腕の中で

先生の頬が真っ赤に染まっているのを!





さあ、彼は誰のもの?
(あの犬耳引っこ抜いてやる!!)

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てる様へ相互記念です!
デスレイ前提の総受けとのリクエストだったのですがこれ…デスコ出番短っ(^P^)全てかっさらってくデスコール氏が書きたかったんですがあるぇ?しかしルークが黒い…そしてちゃんと総受けになっているのだろうかこれ。何気に総受け書くの始めてでした!総受け楽しい!本当に相互ありがとございます!どうぞお持ち帰りしてやってください^^

これからよろしくお願いします!

あまりにもデスコール氏の出番がなかったのでその後の二人の会話文をぽつりと載せておきます。

おまけ


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