確かに彼はいつも紅茶ばかり飲んでいたし、ワインを飲むにしても少し嗜む程度だったからあまり酒には強くなかったのかもしれない。そんな彼に悪戯半分で酒を勧めた私にも責任はあるだろう。
だが、これは酷すぎる。
「あ、やっ…ちが、」
「ふあっ!?あ、そこはだめっ…ああ!」
「ん…大きくて、入らない…」
次々と耳に入ってくる艶やかな声にふつふつと沸き上がる欲望を理性で抑えつける。
(パズルを解くのに、何故そんな声が出る…!)
その声がなるべく耳に入らないようにと全力で他に意識を向ければ、大きな声で名前を呼ばれ逃避したかった現実に引き戻された。
「ですこーる!」
「な、なんだ」
つい先程までナゾパズルに奮闘していた彼は何時の間にかソファに座る私の足元に移動していた。
「なぞが、解けないんだ…」
ぺたんと座りこんだままそう告げた彼の頬は上気し瞳は心なしか潤んでいた。それに加え位置からしたら当然なのだが上目遣いで私を見つめる彼に理性はギリギリだ。キツい。これは非常にキツい。
彼と私の理性を守る為に彼から必死に目線を逸らし何も考えずそうかと答えれば、む、と不満気な声と共に膝にかかる重み。
(まさかっ…!)
「ですこーる」
そのまさかだった。エルシャールはむっとした表情のまま私の膝にちょこんと跨ってこちらを睨んでいる。全く迫力はないが破壊力は抜群な彼に理性が悲鳴をあげる。
(助けてくれ…!)
「きみ、私のはなしきいてた?」
そんな私の心境を知ってか知らずか彼は私の顔を覗き込むように聞いてくる。
「あ、ああ。聞いていたさ」
「うそ!きいてなかった!」
取り繕うようにそう言えばすぐに嘘だと否定された。彼は今ご機嫌ななめらしい。
「もう!このなぞがね、解けないって言ったんだよ!わたしは!」
なのに聞いてないなんてひどいじゃないか!と拗ねたように言う彼に眩暈がする。
「酒を飲んだから頭が上手く働かないんだろう」
「む…わたしは酔ってなんかいないよ!えいこくしんしだからね!」
(どう見ても酔っているだろう…!)
キッパリと酔っ払ってなんかいませんよ宣言した彼に頭を抱える。この状況をどう打破すべきかと考えていた私に彼は更なる追い討ちをかけた。
「ん、ですこーる…はい」
「は?」
言いながら差し出された可愛らしいおでこに訳が分からず聞き返せば、彼はふわりと笑って答えた。
「キスして」
「!?」
(駄目だ…!ここで欲望に負けたらきっと朝一で酔いの醒めたエルシャールに怒られる…!)
ギリギリ残っていた理性を総動員し再びむくむくと沸き上がる欲望を抑えつける。
「なんかねむいから、おやすみのちゅう」
しかしそんな努力も虚しくはやく、と急かす彼に辛うじて繋がっていた理性の糸がぷつりと音を立てて千切れた。
彼を膝から下ろしソファに寝かせる。少し狭いが致し方ないだろう。
(すまないエルシャール。しかし、)
「ですこーる?」
「私を煽った君が悪い」
ふぇ?と首を傾げるエルシャールの頬にキスを落としながら、取りあえずもう彼に酒は飲ませないと固く誓った。
飲酒禁止令
(酔った君はタチが悪い!)
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瑞穂様へ相互記念です!
酔っぱらい教授…楽しかった(^P^)
余裕のないデスコも楽しかったww
ご期待に応えられているかは分かりませんがこんなデスレイで良ければどうぞ貰ってやってください^^
これからもよろしくお願いします!
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