英国紳士とは何でしょうか。女性や子供に優しく、困っている人がいたら迷わず手を差し伸べる。確かに紳士だ。しかしそれだけじゃ足りない。愛する人を一途に求め続ける。うん、これが英国紳士だ。
ぶつぶつと何か自論を語っていた彼はなにか納得したように力強く頷くとこう言い放った。
「という訳でベッドに行きましょう」
「意味が分からないよ」
間髪入れずにそう言ってやれば彼は一瞬きょとんとしたがすぐに口を開いた。
「えーとですね、今僕の言ったベッドに行きましょうっていうのは、先生と僕の愛の行為…すなわちセッ」
「わああ!!そんな説明は要らないよクラウス!」
しょうがないですねとでも言いたげな顔で最低な説明をし始めたクラウスを怒鳴りつければ、彼は不満げに言う。
「だって先生が意味が分からないって言ったんじゃないですか」
「わ、私が意味が分からないって言ったのは君が何で私の部屋にいるのかって事だよ!」
詳しく言えばどうやって鍵の掛かった私の家に侵入したかである。
「愛の力です」
「ああもう君に聞いた私が馬鹿だったよ…」
キッパリと言い放った彼に目眩を覚える。何この子もうやだと机の上でうなだれていればするりと腰に回された手。
「え?」
「さぁ、愛し合いましょう」
その言葉と共に足から離れる地面に顔が青ざめる。
「ちょ、クラウス!下ろしなさい!」
「大丈夫です。優しくしますから」
何が大丈夫なのか全く分からないが私を解放する気がさらさら無い事は分かった。
「クッ…クラウス!待て!」
「ふふ、僕は犬じゃないですよ先生。ああでも、犬プレイもいいかもしれませんね。いや…先生の場合は猫かな?今度試してみましょうか」
私の必死の制止にくすりと笑ってそう返す彼にいよいよ体が強張った。
「先生、そんなに怯えなくても大丈夫ですよ。優しくするって言ったじゃないですか。それに、」
今日は道具なんて使いませんし
ぼそりと呟かれた言葉に背筋が凍る。今日はってなんだ。いつか使うつもりなのか。こわい。この子こわい。
「さぁ、着きましたよ」
そういって優しく私をベッドに下ろす彼は端から見たら立派な英国紳士なのだろう。
私から見たらただの変態だけれど。
「先生…」
伸ばされた腕にびくりと目を瞑るがその手は私の肩を優しく抱いただけだった。
「ク、ラウス…?」
「そんなに怯えられると流石に僕も傷つきます」
そう言って悲しそうに微笑んだ彼に少しだけ罪悪感を感じた。一瞬だけ。
「でもそんな狼に怯える羊みたいな先生を組み敷くのも快感ですよね」
「っ!?」
「じゃあ、いただきます」
目をぎらつかせながらそう言ったクラウスに半分諦めかけた瞬間、
ごいん
と鈍い音がして、クラウスが私の上に倒れこんだ。視線の先にはフライパンを持ったルーク。
「…ル、ルーク?」
「先生!大丈夫でしたか!?」
「え?あ、ああ…」
私の上で伸びているクラウスをどさりと床に落とし私に駆け寄る少年にぽかんとしていれば、じゃあ僕は帰ります。おやすみなさい先生!…確か今日は可燃物の日でしたよね。という意味深な台詞と共にドアの閉まる音。
何で君までここに?とか何でフライパンなんて持っているのかな?とか可燃物の日ではあるけれどそれはそこに伸びてる彼と関係あったりするのかい?とかたくさん聞きたい事はあったのだけれど。
取り敢えず嵐のように去っていった彼に対して、安堵と呆れの溜め息を吐いた。
所謂自称英国紳士
(紳士ならもっとロマンチックに)
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夜凪様へ相互記念、です!
ご期待に添えてるかは分かりませんが私にはこれが限界だったんですよギャグってむつかしい(´・ω・`)取り敢えず私の中の青年はだいたいこんな感じ。
これからもよろしくお願いします^^
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