あれから一週間が経つ。月明かりの当たる窓辺にぽつんと置かれた白磁の欠片がぼんやりと光っているように見えた。

彼がいつも身に着けていた仮面の破片をあの場所で見つけた時は絶望感に包まれたが、一度導き出した結論があったからか多少冷静に考える事ができた。彼は生きている。警察に追われている身の彼だから、きっとどこかに身を潜めているんだと。


(デスコール…君は今どこにいるんだい)


それでも長い間姿を見せない彼に不安は募っていく。もしかしたら出歩けない程の大怪我を負ったかもしれない。もしかしたらどこかで倒れてしまったのかもしれない。

もしかしたら、もしかしたら、

次から次へと湧き出してくる悪い想像に心が蝕まれる。そんな恐怖を振り払い仮面の欠片に手を伸ばす。月光に光っていたそれは酷く冷たかった。


「どうか無事でいてくれ…」


欠片を胸に抱いて祈るように呟く。あの日から習慣になってしまったこの行為はもはや何かの宗教の様にも思えた。









「じゃあルーク、あとは頼んだよ」

「はい!任せてください!」


研究室の片付けをルークに任せ行き着けの店に紅茶を買いに行く。彼が来たときすぐに美味しい紅茶を出せる様に。彼に貰った紅茶はあの事故で使えなくなってしまったから。


「おや、もうこんな時間か…」


紅茶を購入し時計を確認する。今日はアロマが研究室に来ると言っていたから早く帰らなくてはと早足で歩き出す。刹那視界が何かを捉えた。見慣れたマントが路地裏に消える。


「っ…!」


カン、カランと大きな音を立てて落下した紅茶を気にも止めず路地裏に消えた彼の姿を追いかけた。


(あぁ、やっと君に会える!)






早く君に会いたい
(そしてその手で抱きしめて)


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