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結局、サソリを失ったことで人傀儡で人柱力を造る計画は破綻した。
同時に最高の傀儡師をも失った。

人柱力は結局、それまで通り適応者に憑依させる形で落ち着いた。
それが我愛羅だった。
我愛羅は常にその体を一尾狙われ続けている。
不眠症がたたり、目の周囲の隈取に見えるそれは消えることのない隈である。

内に尾獣を飼い、常に精神の浸食を受ける代償は尾獣から奪い取るチャクラだった。
現在は電気にも変換される。
そのチャクラ欲しさに、多くの犠牲が積まれていた。

「傀儡師にとって自分の傀儡を造る時間を奪われる事は、最大の苦痛じゃ。
それすらも耐えるのが忍じゃが、あれはまだ子供じゃった」

小さく、何度も頷くカンクロウを横目に我愛羅はアイスの蓋を閉めた。

傀儡師の脳内など理解の範疇に無い。
ただ、このアイスクリームは美味かった。
濃厚な乳製品、甘ったるく今も舌の上に残る、冷たい食べ物。

「カンクロウ、サソリへの荷物を頼まれてくれんか?
もし、他の者に黙って頼まれてくれるなら、一筆書こう」

カンクロウは身を乗り出した。
今までの話を総括するのなら、サソリは三代目の風影を殺して逃亡したわけではなく、
傀儡師としては当然の願望で里を抜けた者だ。
しかも、国の相談役の頼みごとを、おいそれと断る訳にもいかず、
一介の上忍であるカンクロウの答えは一つしかなかった。

「それは、一体?」

内心、したり顔でチヨはカンクロウを待たせ、自室に戻った。

「カンクロウ、受ける気か?」

「当然だ、砂が誇る最高の傀儡師じゃん。
それにチヨ様が一筆書いてくれるっていうんなら、
新作の傀儡や、今の傀儡の修理や改良もお願いできるじゃん!」

いつになく力の入るカンクロウに、表情も変えずに我愛羅は視線を前に戻した。
ただ、カンクロウに付いて行けば、アイスクリームが食べられる地域に入るだろうか、と考えた。

「そうじゃな、(大分……)少々我儘じゃが、腕は最高じゃ。わしが保証しよう。
さぁ、これを頼む」

チヨがカンクロウと我愛羅に託したのは一本の巻物だった。
恭しくカンクロウは受け取ると、一礼をして部屋を出た。
その後ろを追う我愛羅にチヨは甘い言葉を吐いた。

「我愛羅、お前にも辛い話をしたな。
どうだ、アイスは美味かったかの?
アイスを食べるついでにカンクロウと一緒に荷を運んでくれんか?
念には念を入れたい」

チヨの願い出を、我愛羅は短く了承し、部屋を出た。

「さて、サソリめ。わざわざ見つかるように送ってきおって。
こんな所にアイスなんぞ送ったら分かるじゃろうがっ」

悪態をつきつつ、チヨはサソリが送ってきたアイスクリーム(サボテン味)を一つ弟に放り、自分もス

プーンを手にカップを開けた。

「ねぇちゃん。どうするつもりだ、里に知れたら大事だぞ」

「ぎゃはぎゃはぎゃは。エビゾウ、お前はサソリが催眠術も得意だったことを忘れとる。
自分で撒いた種じゃ、自分で刈らせることじゃ」

***

「あぁ、私だ。テマリだ。
カンクロウと我愛羅は居るか?
いない?
こっちに向かっている?
アイスクリームを食べに来る?
何を考えているんだ、あいつらは」

多分……続く。。。

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