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デイダラさんは湯呑を放り投げ叫んだ。
宙を舞った湯呑は中を零さずサソリさんの手に収まった。
それがあまりにも見事だったため、思わず手を叩いていた。

「見え透いた嘘つくんじゃねぇ」

横目で手を振るデイダラさんを見ながら、サソリさんは二杯目の新茶を飲み干した。
それだけを見ると本当は熱くないんじゃないかと思ってしまうが、
デイダラさんの反応を見る限り熱湯のようだ。

手を止めて給湯室に走り、新しい手拭を水に濡らして戻ると
落ちついたデイダラさんはサソリさんの服を掴んで喚いていた。

濡れた手拭をデイダラさんに渡すと、湯呑の中身が掛った部分に押し当て、
やはりサソリさんに文句を言った。

「酷いじゃないか、サソリの旦那。
オイラは嘘なんてついてないぜ、うん」

「you、もう一杯持ってこい。熱湯でいいからバケツで持ってこい」

顔だけデイダラさんの方に向けてサソリさんは私に命令した。
しかし、それに従えばデイダラさんは再び火傷をすることになる。
今から湯を沸かすのも面倒だ。

「you、絶対に持ってくるなよ、うん。
サソリの旦那はオイラに掛ける気だ、うん」

それは分かる。
デイダラさんが持ってこないように命じるので私は板挟みになる。
雇い主が二人もいる弊害だ。
どちらか一方の命令を聞けば、もう一方の命令を無視した事になる。
私はデイダラさんの命令を聞きたいが、それを許してくれるだろうか。

給湯室に行こうか、どうしようか迷っているような足取りで
その場をウロウロする。

「あの、熱湯は危険ですから、アイスで構いませんか?」

言った後でこれが正解だったと思いだした。
サソリさんだけでなく、デイダラさんも持ってくるよう私を走らせた。

給湯室にある冷凍庫からヴァニラアイスのカップを二つ取り出し、
金属スプーンを二つ持って応接間に急いだ。
今度は仲良く二人でソファに座っている。
とても現金な人達だ。

二人の前に出すと、素早く手に取り、開封した。
アイスを食べる時、二人はとても大人しい。

一安心したその時、扉が叩かれた。
私が返事をする前にデイダラさんとサソリさんはアイス片手に奥へ移動した。
二人が最初に来客者に会うことはまずない。
来客の対応は最初に私がして、その後に私が二人を呼びに行く。

サソリさんがアイスを食べに人形から出る事が多くなった頃から冷やかしで来る客が増えたからだ。
何処から見ているのか心底不思議だ。
サソリさんは殆ど人形の中にいるし、必要がなければ地下の部屋に籠っている。
そうか、アイスを食べるときはいつも此処だ。
此処なら窓があるし、時々出入りがあるからそれか。

妙に納得しつつ、返事をしてから扉を開けた。

「あんた、ジャシン様を信仰しないか」

開口一番に男はそう言った。
私は黙って扉を静かに、しかし確実に閉めた。

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