5


石壁から距離をおいて鳥は地面に降り立った。
鳥は煙にまかれると小さな置物となりデイダラさんの手に落ちた。
それを、何故だか不服そうにポーチへ突っ込んだ。

「チィ、芸術を見せられなくて残念だ。うん」

それがどういう意味なのか全く分からない。
探偵業に芸術がそれほど必要なのだろうか、それにしても何故そんなに残念そうなのだろう。
鳥が変身したことにも驚いたが、知りもしない”忍術”と決め付けて、そういったものなのだろうと飲み込んだ。

「鳥がですか? 可愛くって飛んで、すごかったですよ」

ただ思った通りの感想を述べた。
鳥に命を助けられたのは本当だし、丸くてなんだか可愛かった。

「なんだと?」

首をぐるりと回して、片方の目で睨まれる。
しまった。
失礼な事を言ってしまったらしい。
何か言い方が悪かったのだろうか。

「どこが凄かった? 具体的に言ってみろ、うん」

「ぃえ、あの。あんな狭い階段とか人を乗せて飛んだり、身体とか丸くて愛嬌があって可愛いというか、その……」

必死に言葉を探す。
今まで鳥をこれ程誉めようと思った事はなかった。
どこが良かったのか、頭の中で先程まで乗っていた鳥を必死に思い出す。
しかし思い出そうとすればするほど、輪郭がぼやけてしまう。
しっかりと見ていなかったといえ、さっきまで見ていた。
それなのに、迫るデイダラさんに強いられる緊張に頭の中は白と黒が飛び交う。

「そうか! オイラの作品が分かるか。あの二次元的ディテール、機動力が! うん」

怒られるとばかり思っていたが、デイダラさんは腕を広げて力説する。
そんな事を私は言ったのだろうか。
でも、機嫌が良くなったようなので安心した。

「そんな事は後でいい。さっきの鏡を渡せ」

「はい」

サソリさんが人相悪く言うのでポケットに入れていた鏡を渡した。
傷ついていないか心配だったが、無傷のままサソリさんに渡せた。
サソリさんは受け取って、懐にしまい込んだ。

「臨時収入だ、角都が喜ぶな。うん」

「その鏡も電気が入ってるんですよね? 私から見れば普通の鏡ですけど」

電気として蓄えられるようになって、チャクラも売買の対象になっている。
とはいえ一般人から得られるチャクラなんて高が知れているし、役所などでしか受け付けていない。
余程チャクラの多い者ならともかく、一般人はチャクラを提供するよりも血液を提供した方が医療に役立つ。
だから、売買の対象となるのは殆どが何らかの形で物に蓄積されたチャクラだ。

以前の時代に用いられた道具に染みついた持ち主のチャクラや、意図的に保存された遺物は未だに残っている。
それが先程のような鏡であったり、武器として利用されたクナイであったりする。
それなりに高値で取引されるが、出回らないものでもない。

「普通の鏡か……うん」

デイダラさんは微かに笑った。
その意味を事務所に帰ってから知った。

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