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不安ながらも、資料を捕まえてくれた人物・トビさんの話を聞いてみた。
その知り合いというのは探偵をしているらしい。
探偵というのも職業としてどうなのだろうか、できれば安定した職業が良いのだが、とは思ったものの、想像しているものとは少し違うらしい。

「僕からの説明じゃ足りないので、良ければ直接行ってみてください」

そう言って、事務所の住所と自分の名前、知り合いの名前を記した紙を渡してくれた。
一挙一動が多少芝居がかっているが、見ている分には楽しい人物だ。

「有難うございます。考えてみますね」

トビさんからの説明を聞き、家で考えてみることにした。
住所は前のバイト先に程近い。
むしろ前のバイト先よりも近い。
「これぐらいは出してくれる筈だ」とトビさんが提示した給金も安くはない。
探偵などという非日常感のある職業と給金に心クスグラレ、用心しつつ教えられた住所に向かった。

住宅が乱立している所ではなく、どちらかというと事務所街に近い所だ。
そこにある二階建ての建物が住所先だった。
数段の階段と手すり。
壁には求人の紙が貼られていた。

階段を上がり、扉を叩こうとした。

虫の知らせというのはあるもので、扉を叩くのを躊躇った瞬間に勢いよく扉が開き額を直撃し体を手すりに追いやった。

「ぐぁ!」

我ながら女とは思えない悲鳴を上げてのけ反った。
直後、扉は吹っ飛ぶ勢いで一旦閉じて開いた。
耳をつんざく爆音が、爆風が駆け抜けていく。

耳を塞ぐ間もなく訪れたそれは鼓膜を叩き、全身の肌が粟立つ。

「誰だ!」

むしろ私の台詞だ、それは。
ジンジンする頭を押さえて手すりにもたれかかる。
目の前で星が飛んでいる、その視界に扉から顔を覗かせる男性が一人。
多分、この男性がさっきの台詞を吐いたのだ。
いきなり「誰だ!」は無いだろう、しかもその前の音は一体何なんだ。

「誰だお前、うん」

意外と丈夫な私の耳は爆音にも耐え、しっかりと言葉を聞いていた。
ここまでくれば根性だろう。
その根性は喋ると同時に萎えた。

「求人の募集見て来ました……」

引かれた扉にもたれかかったまでは覚えていた。
ただ、その先の記憶はプッツリと切れている。
やっと気絶したのだ。

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