p4(さかな、さかな、いたち?)
買ってきたばかりの串団子を皿に乗せ、
熱めのお茶と一緒にお盆で運んだ。
片方だけは量が多い。
多くしたんだから多い。
「お茶をお持ちしました」
少しだけ声が上ずるのは仕方がない。
これはどうにかならないものかと思ったが、
どうにもならないようだ。
最近は見慣れた、
黒に赤い雲の服。
今日はお客様も着ている。
以前に勤めていた喫茶店でも見た服装に、
何度も見た顔。
意味もなく覗き見た顔。
写真が散らばった机のどこにお茶と串団子を置こうかと迷った。
「おや。
イタチさん、置く場所がありませんよ」
「さっさとこれ片付けろよ、うん!!」
デイダラさんが不機嫌そうに写真を指差す。
どうしてこんなに機嫌が悪いのか見当はつかない。
何か深い理由があるのかもしれないが、
今はもう少しここで立っているには十分な理由ができた。
たしか、黒い髪の男の人はイタチさんだった。
鬼鮫さんがそう言っていた。
喫茶店ではそう言っていた。
「仕方ありませんね、
お嬢さん、こちらに渡してもらえますか?」
「え? そんな……。
構わないんですか?」
私はもう少しここで立って待ってたいんですが、
ダメですか?
ダメですかね?
「えぇ、
しばらく片付きそうにありませんし」
ため息混じりに写真のことを言っているのだろう。
しかし、そんなことはどうでもいい!!
声かけてもらっちゃった!
声かけてもらっちゃった!!
これは、手渡す時に気をつけないと。
私が飛んじゃう。
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