10p(ちょっとは本編らしくなってきた?)
レストランを爆破することもなく、無事に会計を済ませて四人が辿り着いたのは、昨日ファラッドが案内された家だった。
夜と昼とでは見た目も違い、古めかしく見えた外壁も真新しく塗り替えられた物だと知れた。
ファラッドを案内した時と同じ足取りでカロルは三人を案内した。
昼の光で浮かび上がる廊下には嘔吐の形跡があった。
その場所で足を止め、カロルは見取り図を引っ張り出した。
「ここが下見に来た連中の限界だ。
奥には入っていない」
カロルが最初に部下へ教えることは撤退する勇気だった。
命は消耗品ではない。
それが最初で最後の教えになる時もある。
だが、その勇気で救われる時も多い。
「下らない。こんな入り口で半数が身動きもとれなくなったのか?」
「正直、驚いている」
反論できなかった。
玄関から入って正面の廊下、歩いて五分もかからない場所で、下見に来た部下は息も絶え絶えに救護要請を出した。
家に入った時間から考えて、連絡を取るのに十分以上かかっている。
たかだか一本の電話。
しかも、緊急の救護要請はボタン一つで済む。
ボタン一つを押すのに十分以上かかったのだった。
「あ〜あ、なんか汚れが酷い」
一二三が零す。
それは最近廊下を汚した跡ではなく、奥へと続く廊下の先にある汚れだった。
一見、埃だらけの廊下の先に何かを見つけたようだった。
「あぁ、酷いだろ。でも夜よりはマシだ」
夜に見に来ていたファラッドは一二三の腕を引いた。
引かれるままに一二三はファラッドへ体を預け廊下を開けた。
「でもな、こんなのは居なかった」
ファラッドの言葉に三人の視線が開けられた空間へ集まった。
そこには汚れた廊下が写るだけだ。
ただファラッドには、やたらと艶のある蜘蛛が写っていた。
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