4p(所長が美形ネタは多いかと)


毎日机の上に新聞を積み上げて、午前中には読み終わっている。
その燃料に五杯以上の珈琲を飲み干して、脱臭効果のありそうな息を吐き出す。
実際に吐き出すのはファラッドや同僚の一二三へ向けての毒なのだが、
口を開くまでのその様子は絵になる。

事実、絵に収められればどれだけ心労が減ることか。

「火のない所へ爆弾を放り込むのは止めてくれませんか?
俺とカロルはそういった関係にはありません」

何度となく言った言葉だが、上司には効果が薄い。
珍しく目元で笑って、ソファで温かいミルクを飲んでいる一二三へ視線を向けた。
一二三は実に、悪戯をしたような子供のように、いや本当に脳内は子供かもしれない、笑いを浮かべた。

「今回に関しては一二三からの情報だ。
あと、無駄に電波を垂れ流している端末を使うのは止めておけ。
と、君の恋人にも忠告しておくことだ」

新聞を折りたたみながら、
見た目だけは彫刻のような上司は忠告をしてくれた。

(カロル、お前の通話機は盗聴済みらしいぞ。)

内心、ファラッドは友人に忠告した。
どこまで心で呟いても仕方がないので、次に会ったときにでも伝えるつもりだった。

「なんで一二三が情報源なんだ?」

振り返り、吐息をミルク味にした同僚に聞く。
一二三は自慢の長い足を組み替えて答えた。

「私がファラッドを追尾したから。
だって、風呂上りの全裸で出かけようとしてたんですよ〜」

「誤解を招くようなことを言うな。
風呂上りで服を着る途中で電話があったんだ、ちゃんと服を着て出た!」

何故ファラッドは自分が必死に弁明をしなければいけないのか分からなかった。
一人で逆上せあがっているファラッドを横目に、彼の上司は新聞へ視線を落としながら興味もなさそうに訊いた。

「窓から?」

「そう、窓から」

一二三が楽しそうに続けた。
窓から部屋を出ることの何がおかしいのか、ファラッドは上司に問いたかった。

「あんただって窓から出入りするじゃないか。
むしろあんたの方が窓から出入りしてるじゃないか」

窓を出入り口と勘違いをしている節がある上司は深い溜息を一つ吐き、優雅な手つきで人差し指だけを上げた。

「ファラッド、上司への暴言は減給に直接繋がっている事実を忘れているなら、現実的に思い出させてやる」

「すいません。前言を撤回させて下さい」

ファラッドは素早く前言を撤回した。
彼は理不尽な減給を忘れるわけがなく、現実的に思い出す必要もなかった。

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