玉子うどん
なんだか温かいうどんが食べたくなって、近くのショッピングモールのうどん屋に入った。
注文したのは玉子うどん。
月見みたいに目玉焼きのような玉子じゃなくて、まあるい温泉玉子が浮いていた。
こういうふうに、黄身がまんまるい玉子って、なぜだか割るのが惜しくなってしまう。箸でそっとつつくと張りのある表面がぷにぷにと歪んで、今にも割れてしまいそうなのに、たまにくるりと回転して形をとどめている。
なんだか愛しく思った。
そんなことをしながら少しずつ麺をすすった。もちもちとした太めの麺は、思っていたより熱かった。レンゲに乗せて少しずつ冷ましながら食べる。
半分より少ないくらい食べたところで、すこしだけ惜しみながら玉子を割った。
白い膜を割ると、オレンジ色のとろりとした黄身が溢れ出る。薄い茶色のつゆの中で、そのオレンジはとても映えた。
麺に黄身を絡めるように混ぜる。黄身が混ざって、つゆ全体が黄色くなった。
さっきまでの温泉玉子の形はかげもない。
ああでも、これも生まれ損なった命なんだよな。
そう思うとまた愛しくなって、まろやかになったつゆを、レンゲにすくって飲み込んだ。
end
玉子うどんたべたよ記念。
ひとりで飯屋に入るほど開き直りがいることってないと思う。
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