決してそれが本当に幸せなのかは分からないのだけれど
イビツ、という字は、「歪」、つまり、正しくない、と書く。
私が彼に対して抱いてる感情が"イビツ"であると理解している私は、つまりその感情を否定していると同じなのだろうか。
ねえ、と彼に問う。
「どう思う?」
彼は静かに空を見つめる。
その視線は決して私を捕らえることはない代わりに、もう二度と私以外を見ることもない。
ねえ、ともう一度声をかける。
「私はそうは思わないよ」
私が彼に抱く感情は確かにイビツなものだ。
けれど、それを否定しようと思わない。
否定したくないからだ。
それに、"イビツ"というだけで、それを否定することになるのかな?
ねえ。
「そうでしょう?」
私が彼に抱くのは。
"イビツ"な恋情。
"イビツ"なだけの、恋情。
私は彼を抱き締める。
冷たい彼を抱き締める。
幸せだと思う。
幸せだ。
血溜まりの中で、
私たちは永遠の愛を誓うのだ。
決してそれが本当に幸せなのかは分からないのだけれど
end
かなり昔に書いた話です
びっくりするくらい暗いですね!
小説というより詩だよなあ
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