光と闇





「やあやあ、ご機嫌よう。元気にしているかい」

闇は、光に向かって言う。

「見れば分かるだろう?それとも、お前の目は節穴かい」

光は、闇が嫌いだった。
真っ暗な闇。
自分がある所にかならず現れる闇が、光は鬱陶しくてならなかったのだ。

「そんなことを言われてもね。なんせ、私達は背中合わせだろう?私は、君の顔すら知らないさ」
「ああ。私も、お前の顔を見ることがなくて清々する」

彼らは背中合わせの双子だった。
背中合わせで生まれ、背中合わせで生きてきた。
光と闇は、顔を合わせることはない、けれども一番親しい者同士だったのだ。

「私は君の顔を見てみたい」
「私はお前の顔なぞ、視界の端に写るのも嫌だ」
「なんと連れないのだろうね、我が兄弟は!」

闇はくつくつと可笑しそうに笑う。
光は、イライラとその綺麗な髪の毛をかきむしった。

「闇よ、お前はいったい何が可笑しいのだ」
「光よ、私は我々の存在というものが可笑しくて笑うのだ」

闇はいよいよ腹を抱えそうな勢いで笑い出した。

「なんせ、私達はお互いがいなければ存在していないも同じじゃないか!」

笑いながら言う闇の声は、どこまでも可笑しそう。
光はそれを聞きながら、笑う兄弟の髪が項に当たっているのを感じた。

「私達は、私達と言う概念は、お互いがいないと確立しない。光がなければ闇はなく、闇がなければ光はない。なんと可笑しいのだろう!なんと哀れで、なんと狂おしい……。そうは思わないかね、兄弟よ」

闇の言葉に、光は肯定も否定もしなかった。
光は知っていた。
闇は、その変わることのない事実から、未だに抗おうとしていることを。
だからか、光は闇が憎たらしくもあり、同時に愛おしくもあった。

「…………光よ、私は君が憎い。憎くて憎くて仕方がない」
「闇よ、偶然だな。今回ばかりは、私も同意見だ」









end



どうしよう、童話みたいなの書くつもりだったのに擬人化っぽくなった。



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