鳥かごの中の双子



「あーあ、また負けちゃった」

兄の声があっけらかんと負けを認めた。双子の弟と組み手をしたら、隙をつかれて投げ飛ばされてしまったのだ。尻餅をついて、尻がじんじんと痛む。
弟は、それを冷ややかに見つめている。

「兄さんには、負けないよ」
「チェスはまだ僕が勝ち越してるよー」
「それもいつか勝つ」

そう言って弟は背を向けると、兄を残して闘技場から出て行こうとした。
ねえ、と兄は弟を引き止める。

「僕に、そんなに負けたくない?」

そう問うと、弟は足を止めた。

「兄さんだけには、絶対に負けない」

弟はそう言い残すと、闘技場を後にした。
ひとり残された兄は、ただ苦しそうに眉根を寄せた。



彼らには、親がいない。孤児ではない。本当に、親がいないのだ。
彼らは王立研究所の研究の成果、人工生命であった。試験管の中で卵の状態から遺伝子の調整を受けたのだ。
研究目的は、聖剣の持ち主に相応しい人材を造ること。永らく主を選んでいない聖剣は、ただのガラクタでしかない。だから、その能力を最大限に発揮でき、聖剣に選ばれる素質を備えた生命を造ろうとしたのだ。
しかし、研究は予想外の岐路を辿る。代理出産で生まれた子供は、双子だったのだ。どうやら代理母の胎内で二つに分かれ、二人の生を宿してしまったようだ。
しかし、聖剣に選ばれるのは一人だけ。どちらが選ばれるかは分からない。だから、研究者達は二人をどちらも同じように育てた。
どちらが選ばれてもいいように。

その双子には、遺伝子操作のせいか、ひとつだけ身体的特徴が異なっていた。
兄の髪色は金で、弟の髪色は黒だったのだ。



それから十二年経ち、金色の髪の兄は眉根を寄せながら黒髪の弟を想った。
弟は兄に対して対抗心を燃やしている。 弟はこの閉じた世界しか知らない。故に自身の肯定のために聖剣を欲している。
しかし、それは間違いであると、兄は思う。兄もこの世界しか知らない。しかし、ひとつだけ分かることがある。

我らが対抗すべき者たちは、この世界の外にいる。

それがなんであるのか漠然としか分からないけれど、でも、この世界に留まることはしてはならないと思うのだ。

十二歳の兄にはそれをどう伝えればいいのか分からない。だから、弟に気付いてくれることを願うしかない。
こんなことを、している場合じゃないんだよ、と。

兄はひとつため息をつくと、鳥かごのような闘技場から出て行った。





end

意味不明ですね、すみません

兄が後のブラブレで弟が後のブラダクです。
このころはまだどちらも選ばれてないという設定なので、ブラブレとブラダクはまだそんな呼ばれかたをしてなかった故の、兄と弟呼び。
名前はちゃんとあると思うけど、なんかほら、勝手につくるのもアレだから。

ブラダクはめっちゃブラブレに対抗心を燃やしていると、なんかそんな話です



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