IT WAS THA CRUEL TRUTH



 星のない夜だった。
 北に瞬く一等明るい星が好きな私は、少しだけ残念に思った。どんな夜でもひとに道を示すその星が、まるで神のように思ったからかもしれない。
 神の見えない空を見上げて、口を開く。

「いつまで、私につきまとう気だ」

 背中で、フフ、と笑い声が聞こえた。自分とそっくりな声に、不快感がした。

「つきまとう、なんか。私とお前はオナジなんだから」

 自分と同じ声。
 けれど、全く異質であるその声音。
 根本的な何かが違った。しかし、それ以前の何かが同じだった。それが何かは、分からない。

「私たちは光と闇。光があれば闇が生まれる。闇があれば必ず光がある」

 声が言う。聞き飽きたセリフだった。何が面白いのか、その声は毎度そのセリフを繰り返す。

「光と闇は、背中合わせ。だから、共に在るのは自然なことなんだよ」
「だが、それらが出会うことは決してない。私たちが光と闇ならば、こうして会話することも有り得ないはずだ」
「そう。だから面白い」

 また声が嗤う。不快感が増す。あってはならない何かが、そこにあるような。目覚めさせてはいけない何かを、起こしてしまったような。
 唐突に、不安と心細さが身の内側を襲った。

「なあ、ブラスター。光の名を冠す者よ。私たちは人間だ。人間は、全ての可能性を超えられる」
「……」
「私は《ダーク》。闇の名を冠す者だ。元はひとつだったものを二つに分かたれた、不完全な存在」
「……何が言いたい」
「いつかお前は、振り向くよ」

どくりと、心臓が跳ねた気がした。

「もう私は振り向いた。後はお前がこちらを向けばいい。光と闇を元のひとつに戻そう。いや、戻さずにはいられないはずだ。もうお前も分かっているだろう」
「……うるさい」
「なあ、ブラスター。これは運命だ。いつか私たちはもとに戻ると決められている。惹かれ合っているんだ」
「黙れ」
「そうすれば……強くなれるよ」

 振り向きざまに剣を薙いだ。相手の首と胴を切り離すつもりだった。しかし、剣はただ空を掻いただけだった。
 そこには、もとから誰も、存在しないのだ。


「内なる闇は、そんなに怖ろしいかい、ブラスター」


背中から、声が聞こえた。



IT WAS THA CRUEL TRUTH




END


闇落ちならこんなイメージ
いつか自分は闇を受け入れるかもしれないって恐れ。

最後には「お前も"私"だったな」とお互いを受け入れてマジェに……という妄想

ちなみに英文は「それは残酷な真実でした」
あえての過去形



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