衝動



「たまにね、何かを引き裂きたいような衝動に駆られるんです」

そう、彼は唐突に言った。
廊下の真ん中、会議室までの道程で、ブラスター・ブレードは私の斜め後ろを付いてきていた。その最中だった。
あまりに唐突だったものだから、私は彼を一瞥するだけでとくに返事は返さなかった。それでも彼は続ける。

「理由はよく分かりません。本当にふとした瞬間に思ってしまうんです。戦場だろうと自室だろうと、関係ありません。ただ引き裂いてしまいたいと、それだけ」

それきり彼は黙った。
別に返事は求めていないことは分かっている。ただの独白、彼はたまにそんなことをした。
そして、と私は声をかけた。

「そして、お前は私にどうして欲しい」
「……分かりません。ただ、今そう思ってしまっただけで」
「私を引き裂くか」
「できるわけが、ありません」

そうか、と返事をして、私は彼が持っていた資料を受け取った。既に会議室の前だった。

「ありがとう、戻っていいぞ」
「帰りはどうしましょう」
「長引くかもしれない。構わない」

返事をして、会釈する彼に見送られながら会議室に入った。

























騎士王が会議室の扉に消えたのを確認すると、私はすぐに踵を返して自室に向かった。
体がどうしようもなく火照っていた。早くこの熱を吐き出してしまいたい。


騎士王にはまだ言っていないことがあった。
私はたまに何かを引き裂きたいという衝動に駆られる。戦場では敵を、自室ではカミソリで小さく自身を傷つけた。それ以外では、目に見える誰かをこの手で引き裂くことを妄想した。

そして、そのたびに私は部屋に籠もり自慰にふける。
ぐちゃぐちゃに引き裂かれ、触れると湯気をたてるほど温かいそれを想像しながら、シーツを噛んで自身を擦る。
最後にはバラバラになったそれらの中心にうずくまる妄想の中で達するのだ。



自室に戻り鍵をかけると、ベッドに倒れ込む時間すら惜しくて、その場でペニスを取り出した。既に高く屹立し頂点を濡らしたそれをゆるくしごいた。

「んっ……」

漏れる声を左手の指を噛んでせき止めた。痛みがひどく、心地がいい。
壁に背を預けずるずると座り込む。そして先ほどの騎士王を引き裂く妄想を反芻した。
あの美しい顔を引き裂き、肉を剥がし、露わになった眼球に口付けるところで、一度目の絶頂を迎えた。
欲を吐き出すときの、背筋を抜ける快感に耐える瞬間、口の中に鉄の味が広がった。
特有の倦怠感の中で左手を見ると、自身の歯型と唾液の合間に、血が滲んでいるのが分かった。どうやら噛み切ってしまったらしい。
その血をゆっくりと舐めとった。
そして、ふふ、と笑ってしまった。


ああ、なんと猟奇的で、

なんと、甘美な。




end



変態と早漏のダブルパンチ!

CP指定はしないけど、強いていうならブレアルだと思う。



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