背中合わせの気持ち





 白目と渾名される彼が庭に面する廊下を歩いていると、日当たりの良い縁に腰を下ろしている上司に会った。

「お頭?」
「ああ、しろか」

 凄腕忍者と呼ばれる彼の上司は、白目の言葉に俯き気味だった顔を上げた。傍らには煎餅が数枚置かれている。凄腕ではなく、彼を慕うくノ一あたりが用意したものだろう。
白目は軽く肩をすくめた。

「仕事サボって日向ぼっこですか?」
「お前じゃあるまいし。立派に休憩だ」
「オレだってサボってばっかじゃないですよ」

白目はそう言いながら凄腕の背後に回ると、上司の背中に体を預けるように座り込んだ。ちょうど背中合わせのようだ。だけど、ここまで日は差し込んでこない。
アナタは日向。
オレは影。

「……何してんだ」
「お頭にサボリ魔って言われて傷付いたんで、傷心を癒やすために休憩中です」

アホか、と凄腕が言う。仕事中のような鋭さはない、優しさのある声だった。
そう、この人は、本当は優しいのだ。仕事だから冷たいだけで。その冷たさに、自分が火傷を負うのを知りながら。
白目は背中を合わせたまま、膝を抱えた。

「しろ?」
「……はい」
「寒いんじゃねえか。こっちこい」
「……無理です」
「無理じゃねえだろ。ほら」
「だって、アナタの隣は、もう埋まってる」
「はあ?」

凄腕が怪訝そうな顔をしているのを、白目は見なくても分かった。何年も一緒にいるのだ。
でも、その月日でもアナタの冷たさを溶かすことはできなくて。
だけど、たった数回アナタと会った、あの青年には、できたのだ。
正直、悔しくてならない。だけど、それでも、アナタが幸せであるなら、アナタの隣にいるべきは、きっとあの青年なんだ。

だから、オレは。
いつでもアナタの熱を感じられる、その近さに、満足するしかないんだ。

「ねえ、お頭」
「ん?」
「オレは、オレが出来る限りずっと、アナタの近くにいます」

指先を温める程度の熱だけでも、いつでも、アナタに与えることができるように。



end

懐かしいやつ発掘したよ

ははっ、どうしよう、訳わかんねえ。

白目→凄腕×諸泉

凄諸はお互いの素性は知らずに町で知り合った、みたいな。
白目は諸くんに嫉妬してるんだけど、凄腕のことを思うと自分が身を引くことに決めた、みたいな。煎餅=諸くんという非常に失礼な符合、みたいな。



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