2013年赤司誕赤黒
*遊佐さんからいただきました。遊佐さん初赤黒作品です。
「ボク、赤司くんが好きですよ」
唐突に告げられた言葉に、俺は言葉を失った。
「付き合ってください。赤司くんさえ良ければ、ですけど」
いつも通り、そう、例えば「バニラシェイクが飲みたいです」とでも言うように。
黒子は淡々と告げる。
「…黒子、」
嬉しい。死ぬほど嬉しいよ。
でも、それと同じくらい怖くて。
もし、付き合って。幸せな時が続いたとして。
もし、黒子が心変わりをしたら?黒子が、俺の隣からいなくなったら?
…考えただけで、ゾッとする。
いつか失ってしまうなら、最初から手に入れなくていい。
だから、
「黒子、俺は、」
「離れません」
「…え?」
「ボクは、君が好きです。大好きです。そしてそれは、ずっと、変わりません。君から離れることなんて有り得ないです」
「黒子、」
「だから…ボクを選んでください」
凛、と。
黒子の声が、響いた。
「もう一人の君が、君と一つになる前に教えてくれました。君は、ひどく臆病だと。失うことが怖いのだと。それが大切なものであるほど、失いたくないために手に入れることすら躊躇う…と。だから、君を欲するのなら、積極的に行かないと永遠に手にすることなどできないよ、と」
おい。…おい。
お前…っ、何黒子に吹き込んでくれてるんだ!?
全くもってその通りだから、ひどく質が悪い!
「もう一人の君には告白されて、ついでにキスまでされちゃいましたけど」
――瞬間、反射的に体が動いた。
頭にあったのは、ただただどす黒い嫉妬心のみで。
「…もし、君もボクのことを好いていてくれるのだとしたら…、ボクから逃げないでください。ボクは、どこにも行きません、から」
腕の中で、今までいつも通りだった黒子の声色が少し弱くなった。
だけど、その弱いけれどもまっすぐな言葉に、俺は胸が締め付けられた。
「…黒子が好きだ」
「赤司くん…」
「好き。好きだ。だから、俺にお前をくれ…っ」
ぎゅ、っと抱きしめる力を更に強める。
「赤司くん、好きです。君に全部あげます。だから、君をボクにください」
ずっと、一緒にいましょうね。
その言葉を、どこにも逃がさないよう、キスでふさいだ。
* * *
(懐かしい夢を見たな…)
カーテンの隙間から差し込む日差しによって目覚めた朝。
隣には、愛しい君の寝顔。
(ああ、幸せだ)
君に出会えてよかった。
好きになってよかった。
諦めなくて、本当によかった。
「黒子、好きだ…」
まだ眠っている君の額にそっと口づけを落とす。
う…ん、と身動ぎする黒子が、とても可愛くて自然に笑みが零れた。
「ふふ。昨日は少し無理をさせすぎたかな?」
悪ふざけで「誕生日プレゼントは黒子がいいな」って言ったら、あの男前天使のやつ「いいですよ。思う存分抱いてくださって」なんて言ってくるからな。
つい、加減を忘れてしまった。
身体中に刻んだ朱も、後で文句を言われそうだ。
でも、その文句でさえ、幸せだと思えるから。
「愛してる…」
そう言って、今度はくちびるにキスを落とした。
君と同じ場所・同じ時代に産まれ落ちたこの奇跡に、心からのありがとうを。