腐男子赤司〜読書〜(赤+黒)

*『腐男子赤司』の中学時代の話。
メール編に赤黒要素が少なかったため書いてみました。







つい最近、ボクは腐に目覚めました。


赤司くんがBL好きだと言うのは中学時代から知っていましたが、その頃彼とはそこまで親しくありませんでしたし、趣味は人それぞれ、何が好きだとしても赤司くんは赤司くんだと割り切っていたため、特に気にも止めませんでした。


けれど、別の高校に入学し、WCも終わった後。
その頃から、赤司くんは頻繁にメールをくれるようになりました。

それによって彼の今まで知らなかった一面を少しずつ知る事ができ、それと同時に、彼への親しみが沸いてきたのです。


もっと彼について知りたい。彼の好きな事や、興味のあるものについて。


そこで、彼の趣味の中では一番難しくなさそうだった腐の世界に、ボクは足を踏み入れてみたのです。



初めはわからない事ばかりでした。

攻めと受けくらいは知っていましたが、×や+、右や左などの意味はわかりません。
当然ですが辞書にも載っていなかったので、調べる方法もわかりません。

赤司くんに聞くのも躊躇われました。
なぜ急にそれに興味を持ったんだ、と聞かれるのが恥ずかしかったので。


そこでボクは、ひたすら緑間くんに聞きまくりました。
彼は中学時代赤司くんと仲が良かったため、腐に関する知識にも長けていたのです。
なぜ、とは聞かれましたが、正直に赤司くんについてもっと知りたいのだと答えると、妙に嬉しそうに詳しく教えてくれました。


こうして、周りの暖かい支えに助けられながら、ボクは腐海を歩み始めたのでした。



今、腐をたしなむようになって、以前感じていた疑問が少しずつ晴れていくのを感じています。


そして今なら、あの時の彼との会話も、彼が困っていた理由も、わかる気がするのです。




 …




「黒子は本が好きなのか」


休み時間。
黒子がいつものように自分の席で小説に読み耽っていると、頭上から凛とした声が響いてきた。
顔を上げると、同じバスケ部で主将を務めている赤司征十郎が、右手に持ったノートをひらつかせながら立っている。

そういえば、休んだ日の分のノートを貸していたんだっけ。

赤司と黒子はクラスこそ違うが、どちらのクラスも教科担任の先生は一緒で、進み方もほぼ変わらない。それならば、単なるクラスの同級生よりも、同じ部活に属していてある程度馴染みのある黒子からノートを借りたい。
彼にそう頼まれ、自分のノートを貸した事を思い出す。


「はい、好きです」


差し出されたノートを受け取りながら、黒子は先程の赤司の問いかけに関して返答した。
その返答に、赤司は「そうか」とだけ言って微笑む。

用件は済んだはずなのに何故か一向に帰る気配のない赤司を不思議に思いはしたが、趣味の話を振られた事は今までない。
会話をこれだけで終わらせてしまうのが何となくもったいない気がして、黒子は「赤司くんも読書好きですか?」と問い掛けてみた。


「うん? …そうだね、俺も本は好きだよ」

「そうですか。共通の趣味を持っているというのは少し嬉しいです。でも、赤司くんは何だか分厚くて難しい本ばかり読んでいそうですね」

「いや、そんな事はないよ。読むのは薄い本の方が圧倒的に多い」

「そうなんですか。どんなお話が好きですか?」


黒子が会話をさらに堀つめてそう質問した途端、赤司は言葉に詰まってしまった。
彼が困るなんて珍しい。

未経験の状況に何か不味い事を聞いてしまっただろうかと後悔していると、しばらく悩んでいた赤司は「そうだな…」と小さな声を出した。


「ファンタジーもの、とでも言えばいいのかな」

「へぇ。意外です」


素直な感想だったのだが、彼の苦笑を誘ってしまった。
その反応に首を捻っていると、それじゃあ、と赤司は話を切り上げる。


「そろそろ戻る事にするよ。次の授業の準備があるから。ノート、ありがとう」


逃げるような勢いで立ち去る彼に「今度おすすめの本を教えてくださいね」と言葉を投げ掛ける。
考えておくよ。
ふっと微笑んだ彼の表情は苦いままだったけれど、そんな微妙な顔でさえも綺麗だと思わずにいられない事に気付き、軽い嫉妬心を抱いた。




 …




結局、赤司くんから本をおすすめされる事はないまま、中学時代は幕を閉じました。


今思えば、あれ、"薄い本"の事ですよね。
BLはファンタジーと言いますし。



赤司くんにこの一種特異とも言える趣味を押し付けられなかった事にほっとする気持ち。

それと、もしその時こっちの道に入っていたら、赤司くんとももっと早く仲良くなれたかもしれない、と残念に思う気持ち。



二つの相反する思いは拮抗していて、結論が出るのはもう少し先になりそうです。








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