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王宮では、今日も王が一人頭を抱えていた。

「どうした王坪。またアイツが何かやったのか? 木村ー馬車貸してー」

「いいけど、何頭引きがいい?」


大臣の宮地と木村が声を掛ける。
王様相手にその口調はどうなのかとも思うが、二人とも別に馬鹿にしているわけではないし、王もそんなことで怒るような小さな男ではないのだ。
それに、口は悪くても優しく気遣いのできるこの大臣達を、王は気に入っていた。


「いや、特に何かをしでかしたわけではないんだ。…あいつの将来が心配でな」


王はため息をついた。


あいつ、というのは、彼の息子の事だ。

王にはハイスペックな一人息子がいる。
頭脳明晰、眉目秀麗、運動神経も抜群でコミュニケーション能力も高い、王子としての素質に恵まれ過ぎている王子。
しかしその本質は寂しがり屋で、いつも友達である隣国の影の薄い王子と一緒にいたずらばかりしては周りの反応を楽しんでいるのだ。

そして宮地と木村はその後始末ばかりさせられるため、「こんなヤツを王子なんて呼べるかあぁっ!!」と、王子のことをアイツ呼ばわりしているのである。


王は、別にいたずら自体は大した問題ではないと思っている。
内容が人を驚かせたりちょっとした落書きをするなど程度の軽い子供騙しのようなものであり、大臣達も王子に怒ってはいても決して嫌ってはいないからだ。


ただ、心優しい王としては、かわいい息子が寂しがっているという事が心配だった。

寂しさをまぎらすために乗馬やフェンシングなどいろいろ勧めてはみたが、王子にはどれも本気で打ち込めるものではなかったらしくすぐに飽きてしまう。


それに、側近以外は王子の事をただのいたずら好きだと思っているため、このまま王子が誤解され続けるのを見ているのも辛かった。



それを打ち明けると、大臣達はニヤリと笑い、

「とりあえず、舞踏会でも開いとくか。国中の女集めれば一人くらい王子が夢中になれるやつもいるだろ」

「準備は全部俺たちがやっておくから、王坪は休んでろよ」

と、早速準備を始めた。


突飛すぎる提案と行動の早さに一瞬戸惑った王は、それでも大事な家臣がかわいい息子のために動いてくれるのだと自分を納得させ、その案に乗ってみることにした。






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