番外編
父は、ボク達の名字をそのまま残してくれました。
それは亡くなった父の希望で、「君達がいつまでも僕に縛られて幸せになれないのは嫌だ。でも、完全になかった事にされてしまうのも寂しい。だからこれくらいは良いですよね?」という、ささやかな我が儘だったのだそうです。
新しい父は亡くなった父の友達で、自分が死んだら妻たちを頼むと言われていて。
元々この名字が気に入っていたため抵抗などはなく、逆に嬉しかったそうなのですが、まさか自分がこの姓を名乗る日が来るとは、と笑っていました。
それと、もう一つ。
ボクの目や髪の色素が薄いのも、父譲りらしいです。
新しい家族ができた時、本当にとても嬉しかったのですが、それと同時に「自分はここにいていいのだろうか」とも感じました。
家族の中でボクだけが、違う色を持っていたからです。
でも、父が遺してくれた"黒子"という名字が、確かなボクの居場所を与えてくれたようでした。
亡くなった父の事が大好きだった、母と、新しい父。
亡くなった父に良く似たボクを大好きだと言ってくれる、新しい父に良く似た弟。
そんな温かい家族に囲まれ、愛され、守られているボク。
血の繋がった父には言えなかった「お父さん」という言葉。
その分の思いも含めて、今の父を「お父さん」と呼ぼうと思います。
お父さん。
ボクは今、すごく幸せです。
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