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「よぉ、モテモテだなテツ」

「青峰くん。久しぶりですね」

「あー…まぁな。つーか、それ全部差し入れか?」

「えぇ、ファンレターと一緒に色々くれるんですよ」

「写真とかも入ってんのか。お、この娘とかいーんじゃね?」

「興味ないです」

「おい、それはないだろ」

「彼以外は、ひじきが生えた大根くらいにしか見えません」

「…重症、だな」





 …





また今日も 病院に行ってきました

元々体力のなかったボクは すっかり病弱になってしまって

全身の骨が脆くなり

内臓にもガタが来ています


さすがのボクも このままではいけないと思っています

だって こんなに弱くては

キミを守れませんから


お前に守ってもらうほど弱くない なんて
呆れないでくださいね

頑張っているボクはかっこいいって キミは言ってくれたでしょう?


それに キミがボクを守ってくれたように

ボクもキミを守りたい


誰よりも大切な キミを





 …





今 キミは何が好きですか?

キミはきっと今も多趣味なのでしょうね

きっと またそれを当然のように極めて

周囲を驚かせているのでしょう

今のキミを知らないボクには 想像しかできません

でも キミの事を想像するだけでも

自然と笑顔になれるのです





 …





「黒子…っ」

「…それが、ボクの名前ですか」

「…やはり、覚えていないのだな…。黒子テツヤ、それがお前の名前だ。お前は事故でひどく頭を打って、病院に運ばれてきた。黒子、何か覚えている事はあるか?」

「はい…一番大切な事は、忘れなかったようです」


ボク、彼が好きなんです。







ボクは事故に遭ったようです

頭を思いきり打ったらしく
自分の名前も覚えていませんでした

でも 心配しないでください

キミへの想いだけは 忘れていません

何もなくなった頭の中で
今は それだけが ボクの中に溢れています

それだけしかないのに 何故か すごく暖かいんです


だから 記憶が戻るまでは

ただ まっさらな気持ちで

キミの事だけを 想わせてください





 …





「黒ちん…まだ思い出せないの?」

「…」

「ねぇ、黒ちん」

「…彼は」

「もう十分だよ…」

「彼は、どこにいるんでしょうか?」







キミは どこにいるのですか

一目だけでいいから 姿を見せてください

キミは どこにいるのですか

伝えたい事があるのです


かくれんぼを始めたのは ボクの方からでしたね

いくらボクがかくれんぼが得意でも

キミに勝つ事ができない事は わかっていました

それでも キミに見付けてもらうのが嬉しくて

ただ しあわせで


でも今は こんなにも不安で仕方がないんです

キミが見えない事が 怖い


お願いです 出てきてください

ボクはもう キミへの想いしか持っていないんですよ


キミは そんなに意地悪な人でしたか?

それとも こんな惨めなボクには もう 気遣う価値もありませんか?


…あいたい、です。





 …





毎日欠かさず書いているキミへの手紙は、気付かぬうちに5千を超えたようです。

それでも、まだ足りない。

キミは気付いたでしょうか?

まだ キミに伝えずにいる言葉があるんです。

いつか、キミに直接伝えようと思っている、とても簡潔な言葉です。







「…キミは、」




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