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「手紙を、書いてみようと思うんです」
「…そうっスか。黒子っちなら、きっといい手紙が書けると思うっス」
何でも見通してしまうキミには
きっとボクのこの気持ちもわかってしまっているのでしょう
ボクがこんなに苦しいのに
キミはそれを知りながらもいつも通り笑っている
そんなキミを憎めないのは何故か なんて
ボクだってわかっているんです
"一目惚れ"という甘美な一言の意味を
"一目惚れ"に苦しんで初めて知りました
…
今 ボクは病院にいます
ちょっと火傷をしてしまったんです
家にいたのに 家が燃えているのにも気付かず
キミへのこの手紙を書いていました
キミは馬鹿だと笑うのでしょうね
でも そんなキミの笑顔にさえ焦がれて
この手紙を書いているんです
病院に来る事になったこの火傷よりも
キミを想って燃え続けている胸が痛い
…キミのせいです
…
「黄瀬くん、ほら、見てください」
「どうしたんスか…ってええぇぇぇっ!! …マイミクがカンストしてる…?!」
「すごいでしょう。ボクもびっくりです」
「てか黒子っち、そんなに人付き合い得意だったっけ?」
「いえ、そうでもないんですけど…彼が返事をくれないのは、ボクの言いたい事が上手く伝わっていないせいなんじゃないかと思いまして…他の人の意見を聞きたくて、試しに手紙を公開してみたんですが、そうしたらマイミク申請が後を絶たなくて」
「…」
「マイミクさん達のお勧めで、今度雑誌にも投稿してみる事にしました」
「…そうなんスか」
梅の花が咲きました
その慎ましくも鮮烈な香りは ボクの脳裏にキミを浮かばせます
いつか この紅を一緒に見たことがありましたね
あの時と同じ梅
でもあの時よりも少し綺麗に見えるのは
きっと梅よりも綺麗に咲き誇るキミが
今 隣にはいないからでしょうね
…
「文集を出すことになりました」
「知ってるっスよ! 雑誌に載ってからの反響凄かったもんね」
「はい。…ボク、今の仕事は辞めて執筆活動に専念しようと思います。これからは印税とかも入ってくるので」
今日、辞表を提出しました。
色々と世話を焼いてくれた上司は、何も言わずにそれを受け取ってくれました。
短い間でもお世話になった職場を去る事は、やはり寂しくもあります。
でも、ボクは決めたんです。
これからは、キミにこの気持ちを伝える事だけに専念します。
これからは、ただ、キミを想い続けます。
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