W
「舞踏会とかめんどいー…」
「そうですね…」
一緒に出ろとは言われましたが、ボク、人混みとか苦手なんですよね。
王子の友達である隣国の王子が呟く。
彼の日に透ける空色の髪を見つめながら、高尾は苦笑した。
「テッちゃんは目立たないんだからいーじゃん。オレなんか今日の主役だから挨拶して回るしかないんだぜ? どんだけ人集まると思ってんだよ…。あ、でもな」
高尾は首を傾げる空色に向かってニヤリと笑った。
「今日はな、気に入ったヤツがいれば、ずっとそいつのとこにいていいらしいんだ。だから、」
「適当に誰か捕まえて、さっさと会場から出てしまいましょうか」
二人の王子は、いたずらっぽく笑った。
急に消えても後々うるさくなさそうな、でも面倒見も良さそうな人がいい。
国中の人が集まるなら、きっと一人くらいはそんなヤツもいるだろう。
お互い相手を見つけて会場を出たら、相手に適当な事を言って、いつもの場所で落ち合おう。
そんな"いつもの通り"の企みをした王子達は、今日が特別な日になるなんて想像すらしていなかった。
← | →
[しおりを挟む]