好きだなんて言ってあげない(赤黒)

*お題提供:Twitter







「好きです、赤司くん」


そう告げる無表情な彼の、余裕のない声色が好きだ。


「そうだな」


そう返した僕を、アクアブルーの瞳が睨み付けるように見上げる。
その瞳も好きだと微笑みで語ると、愛らしい薄い唇から不満が漏れる。


「その返事は狡いです。…ボクばかり好きみたいだ」


ぷく、と膨らんだ頬に手を伸ばす。

俯いた彼は、頬をつつかれると思ったのだろうか。
空気が抜かれていつも通りに戻った頬は、包み込んだ僕の手のひらを予想よりもずっと柔らかく受け止めた。

少し冷えていた僕の手は、熱を増していくテツヤの頬にじわじわと温められる。
体温を共有する感覚は、心地好くて、少しくすぐったい。


手の位置をずらし、控えめに存在感を放つ唇に親指でそっと触れる。

瞬間、ピクリと揺れた肩に、抑えが利かなくなる。

吸い付くような桜色に誘われ、唇を寄せる。
その熱に溺れそうになりながらも、脳の奥から呼び掛ける理性は、自分の荒れた唇を思い出させた。

優しい彼を傷付けたくはない。
…大事に、したい。

その一心で何とか踏み止まった僕は、静かに唇を掠めさせただけで、彼から顔を離した。


「臆病者ですね、キミは」

「…うるさい」


それ以上何も言うなと、テツヤの頭を胸へ押し付けた。
テツヤは一瞬だけ呻くような声を上げたかと思うと急に黙り込み、くす、と小さく笑う。


「赤司くんだってうるさいじゃないですか」


テツヤに触れるとどうしようもなく高鳴る心臓。
その音は、表情の乏しい彼の、蕾が綻ぶような笑顔を生み出す。

小刻みに揺れる水色を抱く腕に、ほんの少し力を込める。


「今は、我慢してくれ」


"好き"と言ってしまうのは容易い。
今現在も、この胸に、"好き"は溢れ出しそうなほど積もっている。

けれど、そんなありふれた言葉では、とても伝えきれない。

テツヤと出会うまで決して感じた事のなかった、この特別な感情。
それを伝える手段として最もふさわしいのは、同じように特別な唯一無二のこの心臓だと、僕は思う。

縋るように必死に、止め処なく"好き"を叫ぶ。
僕の命がある限り、テツヤへの愛が機能しなくなる事はない。

過去も、今も、未来も。
言葉よりも確かに感じる事の出来る証。
それを捧げる。



だから、今は。

好きだなんて、言ってあげない。





(それでもきっと、どうしても言わずにいられなくなる日が来るのだろうけれど。)





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