諸悪の根源(木←花→黒)
*黒子と花宮は幼なじみ設定。
幼馴染みの空色が、バスケを嫌いになった。
彼を見捨てたのは彼の仲間達であってバスケではなかったのに、優しい彼は人を嫌うことができず、あんなに好きだったバスケを嫌った。
いつだって晴れていた空色は、曇っていった。
ただ、純粋さだけを残して。
だから、決めたんだ。
お前が嫌えない分、俺が嫌ってやる。
お前が苦しんだ分、他の奴も苦しめばいい。
お前は笑顔を奪われたのに、他の奴が笑っていいはずがないんだ。
俺は、悪になる。
…
久しぶりに会った空色は、またバスケをしていた。
すっかりプレースタイルが変わってしまった俺に向かって、彼は以前にも増して輝く強い瞳で、「彼らはそんなプレーはしなかった」と訴えた。
いつの間にか戻っていた、晴れた空色。
それを取り戻したのは、かつて俺が憎み、傷付けた、心から楽しそうにバスケをするあいつだった。
どうして戻ってきた?
何故笑ってる?
これじゃ、まるで。
俺が間違っているみたいじゃないか。
彼を傷付けてしまおうとした。
今度こそもうバスケができなくなればいい、もうバスケの事で苦しまないように。
そんな思いを込めて、腕を振り上げた。
でも、彼を傷付ける事はできなかった。
散々他の奴を傷付けて憎まれ慣れたはずなのに、彼にだけは嫌われたくなかった。
結局、俺はこの一方的で自己中心的な感情で、ただ他の奴等を壊していたんだ。
そして、俺は敗けた。
あいつが声を掛けてきたのは、そんな時だった。
またやろうぜ、と。
許す許さないなど関係なく全てを包み込んでしまうような、そんな大きな笑顔で。
こいつはこの笑顔で彼を救ったのだ。そう瞬時に理解した。
そしてきっと俺の事も救おうとしているのだ。そうも感じた。
それでも、俺が救われる事など決してない。
自分の大切な人を救ったこの笑顔に陰を作ってしまった自分を、俺は決して許す事などできないから。
俺はこれからも、ただ自分を正当化するためだけにこのプレースタイルを続けていくだろう。
そして誰かを傷付ける度にあいつの大きさを思い出して苦しむのだ。
それでいいと、思う。
俺が与えた傷は、きっとこれ以上の痛みを、絶望を、あいつに味わわせ続けるから。
それが償いになるとは思わない。
それでも、俺も一生をかけて、この痛みを背負っていきたい。
そして、この身勝手な俺の願いが叶うならば。
彼も、あいつも、背負った痛みの分、幸せを手にしていければいい。
俺のように屈折せず、強く、真っ当に生きてきた彼らに、どうか、ふさわしい幸せが訪れるように…。