ゆきだー!2
2014/02/08 14:45
ひらひらと落ちゆく一片、二片。それまで散漫だった意識は一瞬にして窓の外に集中した。
時折横からの風を受けてわずかに舞い上がるそれは自分の期待した色を持ってはおらず、僕はその事に落胆と微かな安堵を感じた。
彼と最後に顔を合わせてから一か月が経つ。
未だ慣れない彼の隣。赤くかじかむ指先に触れる事は勿論、視線を交わす事すら、僕達にはできなかった。
隣に、手の届く距離にいるという事実。それだけで、その場所は焼け焦げてしまいそうなほど暖かかったのだ。
次に会う約束をしたのは、この突き刺さるような寒さが少しだけ和らいだ頃。
全てをなかった事にするかのように埋め尽くす白が溶け、代わりに淡く色づくたくさんのつぼみが弾けて、世界を明るく塗り替える季節。
そんな事を考えていたら、何だか無性に声が聞きたくなって。
僕が握り締めた手の中の携帯を開くのと、その携帯の着信音が鳴り出すのは、同じ時間の出来事だった。
画面に表示されたのは、ちょうど僕の頭を占めていた名前。
「−もしもし?」
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