冬と言えばこたつ。こたつと言えばみかん。一度からだを沈めればブラックホールさながら脱出不可能なそれらアイテムに捕まった俺たちは、ひとりひとりがこたつの一辺を占拠して、各々が各々に休日という貴重な時間を無駄遣いしていた。
「暇だねぇ」
と、猫をまくらにしながら寝そべっている相方が言った。猫まくらは、ふかふかしているが、体重をかけられないので首の筋トレと大差ない。
「そうか、暇か」
コントローラーを握り、テレビから眼をはなさない俺に、相方はなおも語りかけてくる。
「おなかすいたよー」
「みかんあるだろ」
「もうない。食べちゃった」
「ダンボール一箱分はあったはずだが」
「腐っちゃうより美味しく食べられた方が多分きっとみかん冥利に尽きようぞ」
なぜか相方は得意げだが、あいにく、俺はみかんと心をかよわせることができない種族――つまるところ一般的常識人だった。
「ひまー」
相方が猫を抱える。諦めているのか、猫は何の反応も示さない。
「俺はとても忙しい」
「コントローラー潰す」
「やめなさい」
「かまってー」
「はいはい」
仕方なしに相方を見遣ると、相方は口をぽかんとあけて、窓の外を見ていた。
「どした?」
つられて、俺も窓を仰ぐ。
そこには、夕暮れにさしかかった桃色の、鮮やかな朱の雲がたなびく、青みがかった空があった。
風に閃き、降り注ぐ陽は、荘厳であり、すべてを圧する。
「いい空だね」
と、相方が言った。
「そうだな」
と、俺は答えた。
黄昏が夜に呑まれるその時まで、惚けたように、俺たちは空を見上げていた。
みつけた
(何かを見つけるには、)
0.3ミリさま提出
お題/「幸せなら〇〇しよう」→「しあわせならそらをみよう」
作者/さきは(片足靴屋/Leith bhrogan)