「あら、いたの?正雄君」

「あぁ、義姉さんが、徹ちゃんと夏野を見てニヤけてた前からね」

「そう、そんな正雄君は二人を見て、やけに嫌そうな顔をしているわね」

「…」

…義姉さんとは昔から仲が悪い。
特にここんとこ1年は、これ以上にない位、修復不可能な位、俺達の間に深く大きい亀裂が生じていた。

原因は、夏野がこっちに引っ越してきたのもあるけれど、何より、智寿子義姉さんの趣向と俺の趣向が相成れないからだ。

徹ちゃんと夏野の事を大層気に入っているらしく、逆に、俺が徹ちゃんと一緒にいた時には、正雄君、自重しなさいと言っているかの様な冷めた様な人を見下したかの様な眼で見てきたもんだった。

何だよ、何だよ、畜生!夏野といい、義姉さんといい!同じ様な眼で俺をみてきやがってッッ!道端で偶然徹ちゃんと会って話してただけでそんな眼をされるつもりはないぜ!

久々に邪魔者のいない徹ちゃんとの素敵なひと時を過ごせそうだったのに、普段は全くもって話しかけてこない癖に、その時に限って"正雄君、今日の夕ご飯はハンバーグでいいかしら"…なんて話掛けてきやがってーーー!!その所為で、"んじゃあ、俺はそろそろ帰るわ"何て言って徹ちゃん帰っちゃったじゃねーか!

しかも夕ご飯ハンバーグじゃなかったしよ!期待させんじゃねーよッ!

ちっくしょう!ちくしょう!ちっくしょーーーい!どいつもこいつも!

夏野と徹ちゃんが一緒にいる時は、あの二人を見ていると微笑ましいわねとか兄さんに言っていたくせによ!
清水といい学校の女といい、女は皆、あーいうのが好きみたいだが、どこがいいのか俺には分からないぜ!まったく!
あんなのスカした野郎なだけじゃねーか!スカンク野郎じゃねーか!

しかも、スキンシップ大好きな天然わんこと普段はツンツンしている子が"ちゃん"付けで呼ぶなんて最高。とか意味の分からない言葉を、あの二人見ながら義姉さん呟いていたしよっ!

まぁ、確かに徹ちゃんがわんこっぽいのは分かる。特にあのにっくきくそ生意気な夏野に対して特に!認めたくないけどなッ!ケッ

けど俺だって、夏野がこっちに来るずっと前から徹ちゃんを、"ちゃん"付けで呼んでいるつーの!
それを、あいつまで徹ちゃん付けで呼びやがって!2個下の癖に生意気なんだよっ!徹さんだろ!普通は!むしろ武藤さんだろ!馴れ馴れしいんだよ!たかがの1年足らずで徹ちゃんとの仲を見せ付けてきやがって!

俺の方が徹ちゃんと一緒にお風呂入った事あるんだぜー!一緒に釣りにもいったし!さらにはさらにはさらには畳の上で一緒に寝たしー!……保と葵ちゃんもいたけど。…小さい頃限定だけど…。

しかも、最近じゃ、徹ちゃんの部屋に毎回と言っていい程あいつがいて、徹ちゃんになかなか近寄れなくなってきているけれど……。


……。


だ、だがっ残念だったな!夏野!
あの本に描いてあったのは、漆黒の艶やかな髪、大きい眼、透き通ったきめ細かい雪の様な肌!薄紅色の唇だッ!
まんま、俺の事じゃねーか!夏野は、俺より焼けてるだろ!髪なんて艶やかどころか重力逆らっているし!黒目の部分はあいつの方があるが、全体を見ればおれの方が眼は大きいはずだしっ!唇の色だったら俺の方が思わずキスしたい位の色艶だしなッ!!


それに、障害が高ければ高いほど、それを乗り越えた後の絆の強さは揺るぎがたい物だと知っているからなッ!

どんなに邪魔されようともっ絶対にずぇぇったいにっ徹ちゃんとバージンロードを歩くんだいっ!

Thanks Clap 10.08.03 hikage.
俺、頑張るよっ!

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