吸血鬼と言うのはいると俺は思う。
現に俺は見たんだ!吸血鬼によって血を吸われて力尽きる人の姿を!
夜道に普段通らない道を歩いていたら、偶然に見てしまったんだ!

"やめ…っ!"

"少しだけだから…"

"痕になるって…!前の時もそう言…ん…っ!"

あんなに最初は抵抗していた奴も結局はその吸血鬼の方に体を預ける形で力尽きていたし!
暗くなっていたとは言え、道端で堂々とやってくれるじゃないか!

「やっぱり吸血鬼はいるんだよ、かおり!」

「え…何の事を言っているの?昭?」

普段からデカイ目をさらにデカクしているのを見ると、俺の話をまったくもって理解していない様だった。
吸血鬼って今言っただろうが…本当に俺の姉かよ…疑いたくなってくるぜ。

「だーかーらー吸血鬼だって!今日、俺は見たんだ。人の首に顔を埋めている男の姿を!確実にあれは血を吸ってた!!」

「え…!?ま、まって…昭。それってあの…恋人同士とか…じゃなくて…?」

恋人?恋人な訳ないだろ!だから、かおりは駄目なんだよ!
いつもどっか抜けているんだからな。
まったく頼りないったらありゃしないぜ。

「なに言ってんだよ、かおり!暗くて相手の顔は分からなかったけど確かに両方とも男だったし、男同士で恋人な訳ないだろ!」

そもそも男同士であんな事するかよ!ありえないだろ!
一人はもう一人の奴より体が細かったとは言え、声からにして男だったし、制服っぽいの着てたし!
うん、確かにあれは男だった!

「え、あ…昭…っ」

「くっそ、相手の顔を見ておけばよかった…!顔を見ようとしたんだけど、キスっぽいのまでし始めて結局は顔を見る事出来なかったし…!」

「え、えええ!?」

確かに前に見た吸血鬼のビデオには血を吸った後、その女にキスする場面を見た事あるし、きっとそれだ!
見た奴と違うのは、相手が女じゃくて男って言う点だけど、やっぱり現実は違うぜ!

「キスする事であの兄ちゃんを自分の直属の部下にするつもりなんだ…きっと…!」

「…そ、それって違うと思う……」

かおりが何だか顔を真っ赤にしているのがよく分からないけど、俺はどんな事があってもこいつを守ってやらなければと心に強く誓った。
何だかんだで、たった二人きりの姉弟だしな!

「かおりー昭ー御飯よー!早くおりて来なさいー!!」

「はーい」

とりあえず、まずは腹ごしらえだな。
腹が減っては戦はなんとかとかって言うし!

「あ、昭…その事は他の人には言っちゃ駄目だよ…」

「何で?」

「な、何でって…その…そう言うのは当人同士の問題と言うか…その…っ」

当人同士?何言ってんだ?
きっと、吸血鬼の正体が掴めていない以上、落ち着いて行動をしろって事だな。

「わーったよ。かおり。まだ相手の正体が掴めていない以上、用心しろって言う事だろ?」

「そ、そうじゃなくて…っ!!」

かおりはまだ何か言いたそうだったが、それよりも夕御飯のいい匂いがしてきてそれ所じゃなくなった。


おっ、この匂いはカレーだな!


Thanks Clap 10.12.15 hikage.
田中さん家の昭くん

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