この村の住人は嫌いだ。
人を観察し、情報を共有しあっている所など特に。
監視されている事に反吐が出る。

「看護婦さんと工房の子じゃないか」

「あんれ、一緒に歩いちゃって、あの看護婦さんと付き合っているのかね」

ただ、偶然会って一緒に歩いていただけで、そんな噂をしてくる。
彼らは、無粋と言う言葉を知らないのだろうか。
何もしらない癖に。見ただけの事を勝手に自分なりに解釈して、そしてそれを他の人に言いふらす。最悪だ。

「違うよ、武藤さん所の子とだよ」

「あぁ、そういえば、毎晩通っているらしいしねぇ、何でも親公認だとか」

「精が出るねぇ」

「おや、そんなヤボな事言っちゃ駄目じゃないか」


……ちょっとまて。




「…徹ちゃん」

「何だ、夏野」

「もう、俺しない」

「ほえ?何をだ?」

本当に分かっていない様な顔をしながら、俺をベットに押し倒し、服の中に手を突っ込んどいてよく言う。
と言うか、最近こればっかりじゃないか!ゲームはどうした!ゲームは!

「こう言う事だよ!俺達がしているの何でか村の人にバレてるし!!」

「なははは、そりゃ、外にまで聞こえる位、している時の夏野の声大きいもんなー」

「う、うるさいっ!そもそも徹ちゃんがやめろって言っているのに、してくるからだろっ!」

「んじゃぁ、夏野がそう言うならやめるか」

「え…」

思ったよりも軽い返答に、脱力する。
というか、今まであんなに人の事を散々しておきながら、それをそんな簡単に言うか…。

「最近、夏野寝不足気味だし、終わった後そのまま気失う事多いいしなぁ」

確かに、勉強に根つめすぎてて寝不足の上に、こういう事もして体力も削られるから、終わった途端に気失うのが最近多いい。
そう言われちゃそうなんだけど…。

「と、徹ちゃんは、それでいいのかよ…」

けど、何だか腑に落ちない。これじゃあまるで、俺につき合っていてくれてたみたいじゃないか。
そこまでしたくはなかったのかよ。俺に言われたからって、そんなすぐにやめられるもんなのかよ!

「徹ちゃんは俺としたくはないのかよ!」

「そりゃあ、夏野としたいけど、無理強いするつもりはないからな」

無理強い?無理強いだと…っ!?

「お、俺は、無理してなんかない!」

「え、だって、夏野」

「うるさいっ!俺、頑張って声出さない様にする!だ、だからっ徹ちゃんは我慢するなよな…っ!」

あれ、何か、俺…支離滅裂な事言っている気がする様な…。

「夏野よ…それワザと言っているのか…」

「は?」

何故かさっきよりも前かがみになっている徹ちゃんに、疑問が浮かんだ。
何で、前屈み?そして、口元に手を当てたまま視線を漂わせてる?

って、あれ、何か、そこ…おかしくないか…?

「いや、いいや、んじゃ、夏野の言葉に甘えて、欲望のままにいかせてもらおかなーっと」

「へ…、うわぁ!ちょ、ちょっと待ってくれ…徹ちゃん…!」

「だーめ。…の前に、…よっと」

そう言うと徹ちゃんは体を起こし、半開きになっていた窓を閉めた。
閉めたことによって部屋の涼しさが減ったのが名残おしいが、普段よりも少し色の入った顔で上から見下ろされて、それ所じゃなくなった。

「これで、声も漏れないだろ?」

「そ、うだけど…」

もっと、前にしておけよと思ったが、その前に徹ちゃんの顔が近づいてきてその言葉を言う事が出来なくなった。


…と言うか、村の人達が言っているのは、俺と夏野の事じゃなくて葵と夏野の事を言っていると思うんだけどなー…まぁ、いいか。普通は、俺と夏野がこんな関係だとは思わないよと、聞こえた気がした。
けど、やっぱり今回も気を失ったから、幻聴かもしれない。
10.07.28-10.07.30.
やめる、やめない

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