「何だこれ」

ある日、徹ちゃんの部屋で見つけてしまった、箱に仕舞われないまま一枚だけ隠されていたとある物。
下から呼ばれた声に降りていった徹ちゃんを尻目に、何か雑誌を見ようと辺りを見回せば、ベッドの下に不自然に置かれた一冊が気になった。
まだ見たことの無い雑誌。徹ちゃんの部屋は思った以上に片付いていて雑誌は机の上か雑誌の棚に仕舞われている。
だが、それだけは何故かベッドの下に、しかも奥の方に置かれていた。

……エロ本か?

あの徹ちゃんも一応は男だ。あっても可笑しくは無いのだが…。

"部屋で二人っきりにでもなってみろ…!小学生じゃあるまいし、これでやらない男がいるわけない!"

"これで何もないなら腰抜けか、本当に恋愛対象として見られてないかだよな"

ふいにクラスメイトの奴らの言葉を思い出して、少しだけ…いや、かなり苛つきを覚える。
いつもよりも苛つきを覚えるのはアレが近いからなのもあるだろうが…。
アレが来てからあと少しで1ヶ月目になる。胸も張って痛い。そろそろ来ても可笑しくは無かった。

……女と言うのは本当に不便だ…。
胸も無い、色気も無い。あるのは女にしては高い身長。低い声。…女ッ気等皆無と言ってもいい。
そんな俺でも体の一部はちゃんと女である証明を月毎に知らせてくるのが厄介だった。

……だから、何もしてくれないんだろうな。

徹ちゃんにとって俺は自分の妹弟である保っちゃんや葵みたいなもの…に近いのだろう。
何度泊まっても何かが起こる訳も無い。

……やはり、あの看護師さんみたいに胸が大きくないと駄目なのか…。

意図的ではないとは言え、前に徹ちゃんに胸を触られた事はあったが、何の反応も示してはくれなかった。
徹ちゃんの手の中にすっぽりと収まっていた俺の胸。
あの時は俺を助ける為にだったから、示すも何もだが…それに俺が触って欲しいといったから触られたと言うのは筋違いか。
徹ちゃんは胸が急に苦しくなった俺を看病する為に優しく撫でてくれていただけ。

"もう年頃なんだから、そろそろブラジャー付けなさい"

そう母さんに言われて仕方なくタンクトップにパッドを付けた物からソレに替えて幾日か経った後、
今日みたいに胸が張り、今までは締め付ける物が無かった俺の胸はその下着によって急に締め付けられ、内臓を潰されているかの様な痛みが急に胸に来て、息苦しくなった。
それで…少しでも楽にしようと、後ろに手をやったが胸の痛みから慣れないソレの仕組みに苦戦した俺は徹ちゃんにホックを外すのを手伝ってもらった。
けど、それでも痛みが和らがなくて。俺は徹ちゃんに胸をさすって貰った。……直接。
ホックを外したとは言え、下着は付いたままだったし、直接触れてもらった方が気がやすまったからだ。

――けど、今にして思えばあれはさすがに……だよな……。あの後徹ちゃんが普通でいてくれた方が結果的に…よかったのか。

少しでも意識されてしまっていたら、もうここには来れなかったかもしれない。
まるであの事が無かったかの様に接してくれるのは助かった…し。

「……」

雑誌を奥から引っ張り出してみれば、表紙から思ったのとは違う普通の雑誌だと言うのが分かった。

――よかった。エロ本じゃなかった…。……だけど、何でこれがこんな所に?

もしかしたらよくない結果のテストの答案でも挟まっているのかもしれない。
なら、これ以上の詮索はやめておこう……。
そう思い、雑誌を元に戻そうとした時、雑誌の中からポトリと何かが落ちた。

「ん…?」

視線を向けてみればそこにあったのは手のひらよりも小さい、透明な包装紙に包まれたピンク色の輪っか状の物で、それは保健の授業で見た事があった物だった。

……これって…もしかしなくても…コンド―…

手にとって何度も裏返しに見てみても、それしか思い当たらない。
それは、性行為をする為に用いられる物だった。

……な、何でこれが雑誌にはさまって…。

封は開けられていない未使用の物。
それに釘付けになっていれば、階段を駆け上がって来る音が聞こえてきた。

――やばい!徹ちゃんが戻ってくる!こんな所を見られる訳にはいかない!

急いで雑誌を元あった場所に放り投げ、手に持っていたソレは慌ててズボンのポケットに仕舞いこんでしまった。
……仕舞いこんでから、しまったと思ったが、もう遅かった。

「ん?夏野どうした?」

「い、いや…」

「今日は泊まってくか?」

「あ、あぁ…」


*


夜も静まり返った時刻、横で気持ちよさそうに寝ている徹ちゃんの寝息を聞きながら、俺はまだ眠れずにいた。
まだポケットの中に入ったままのアレ。

徹ちゃんが…誰かとアレを使ってしたのか…?それともこれから……なのかな…。
俺じゃない…誰かに…そう思ったら胸が痛んだ。

……どんな感じなんだろう。

想像していく度、体が熱くなっていく。
次第に下腹部のむず痒さが強くなっていき、自然と手が伸びそうになる。

――…掻きたい…。でも駄目だ…。ここでそんな事したら…っ。

今触れ様としている部分は容易に触れていい所じゃない。
何とか我慢しようと腹部に手を置いて、呼吸を整えよう…そう思っても、一回でも想像してしまうと徹ちゃんの体からまだ見た事の無い部分まで想像してしまって、足が小刻みに揺れてしまう。
無意識に太ももと太ももを擦り合わせてはトイレに行くのを我慢している様な動きに、やがて段々とすっきりしたい気持ちが強くなっていった。

「ん…っ!」

少しだけ触れて見たら電流が走ったような感覚に陥った。
駄目だ…頭が朦朧としてくる。我慢出来ない。徹ちゃんに触れたい。触れて欲しい。
自分が徹ちゃんに欲情しているのが分かった。……何で…こんな事…今まではこんなにはならなかったのに…。

「はぁ…はぁ…」

体が熱い。汗で濡れて体に纏わりつく服が邪魔だ。胸も苦しい。

なぁ、徹ちゃん。
何であんたはそんなにスヤスヤ眠れるんだよ…。
……俺だけなのか?俺じゃ欲情してくれないのか…?


――なぁ、



「俺じゃ…駄目か…?」

……初めて触れた徹ちゃんの唇は柔らかかった。

「んー……?え…あ…な、夏、野……ッ!?」

寝ぼけ眼の声から忽ち驚きへと変った徹ちゃんの声。
普段は寝起きの悪い徹ちゃんでさえ、今回ばかりは違ったようだ。
それもそうか。

「お、お前何して…!ふ、服はどうしたんだよ!」

――俺は今、服を脱いで徹ちゃんの上に跨っているのだから。

「俺の体じゃ…欲情しない…か…?」

「え…」

さっきまで腕で顔を隠して背けていたその視線が、再び俺の体を見たのが分かった。
頼りは月の光だけだが徹ちゃんのシルエットは分かる。
だからきっと、俺の体も一応は見えている筈だ。
小さいけれど少しはある胸の膨らみから…服の上からじゃ分からない、突起した物まで。

火照った体。脱いだ服は徹ちゃんの布団の上。
でもそれをまた着ようとは思わなかった。
今は体の奥底の熱に気がやられてそれ所じゃない。
この熱をどうにかしたい。……して欲しい。

「コレ…見つけたんだ」

ポケットの中にしまったままだったアレを見せる。

「…!!…い、いや!それは…ッ!!」

何か言い訳を言おうとしているみたいだったがそんな事はどうでもよかった。
今は、ただ…。

「誰かに使う位なら……俺に使って欲しい…」

頭が朦朧としている。
普段の俺はこんな事言わない。しない。
きっとこれもアレが近いからだ。
月に一度来るアレの前に起こる現象。……俺、徹ちゃんに発情している。

「な、つ…の…?」

「駄目か…?」

"使って欲しい"

その言葉の意味は重々承知だった。
誘っている。徹ちゃんにあの行為を求めている。
そして、徹ちゃんもまたその意味を理解したらしかった。

「…夏野…」

俺の腕に触れられる太くて長い指。
引かれただろうか。拒絶されるのだろうか。
そう言えば拒絶された後の事を考えていなか――…。

コンコン

「兄貴ー」

「!!」

「!」

聞こえてきたのは保っちゃんの声。
扉の向こうで遠慮がちに小さく声を出してこちらの様子を伺っていた。

「起きてる?ちょっと明日ので辞書貸して欲しいんだけど」

「…っ」

保っちゃんの声で一気に熱が醒めたのが分かった。
急に何とも言えない恥ずかしさが一気に込み上げてくる。
逃げ出したい衝動にも駆られたが、扉の向こうには保っちゃんがいてそれも出来ない。
とりあえず徹ちゃんの上から急いで降りればそのまま自分用に用意された布団へと身を隠した。

……今日は、もう寝よう。寝るしかない…。明日になればきっとこれは夢だと……っ。

「……あ、あぁ、ちょっと待ってろ」

徹ちゃんは少し戸惑った声を見せながら、ガサガサと言われた物を出していた。
ベッドから降りた音や、すぐ側で物音を立てているのが聞こえてくるとそれだけでさらに居た堪れない気持ちになってくる。

「サンキュ!じゃあオヤスミな!」

「おう」

保っちゃんの声が聞こえなくなったと思えば扉がパタンと閉まった音が聞こえ、再び静まり返った空間が出来上がった。

……とてつもなくきまずい。

「夏野……?」

「…っ」

声を急に掛けられ、思わず体が強張る。
寝たふりだ。このまま寝たふりをしてやり過ごそう。
徹ちゃんの事だ。俺が寝たと分かればそれ以上は何もして来ないだろう。

「……寝たか」

案の定、徹ちゃんはそれ以上声を掛ける事も無く、自分のベッドへと戻ったのが分かった。
よし、このまま徹ちゃんが寝静まったのを見計らって家に……。

「……?」

重要な事に気が付いた。……服…着ていない。上半身裸のままだ。
さっきまで着ていた服をどこにやったかと考えを必死に巡らせて見れば、徹ちゃんの布団の上だった事に気が付いた。

……何してんだ…。よりにもよって一番いけない所じゃないか…そこ…。

自分の間抜けぶりに嫌気がさした。
徹ちゃんが寝静まった時刻に上着を取りに行くか……。
暫くは大人しく寝たふりをして…このまま寝入ってしまって徹ちゃんより遅く起きてしまうのだけは回避しなければ。


チッチッチッ…と時計の音が聞こえる。
今は何時だろうか。1分さえも長く感じられる。

……もうそろそろいいんじゃないだろうか。

さすがに焦れて来た。
何より上半身裸で布団の中と言う状況があまりに恥ずかしくて焦りを促す。

……1時間は経った筈だ。何より徹ちゃんの方から物音がしなくなったし、もういいかもしれない。

恐る恐る徹ちゃんの方へと向ければ背を向けて寝入っている様だった。

……よかった。今なら大丈夫そうだ。

目が合わずにいてよかったと胸を撫で下ろした。

ゆっくりと布団から体を起こす。先ほどの熱が収まった所為でいくばか肌寒い。
近くにあったタオルケットで体を包んでから、物音を立てない様にゆっくり、ゆっくり、静かに徹ちゃんのベッドへと歩み寄った。

……あった。

お目当ての物は窓際の近くにあった。上着一式。
少し手を伸ばさないと取れない場所。バランスを崩せば徹ちゃんの上に倒れてしまう危険性もある。

どうする?

大丈夫だ。徹ちゃんは寝入ったらちょっとやそっとじゃ起きない。
自分にそう言い聞かせ、呼吸を止めて手を差し伸べる。少しだけベッドがギィ…と鳴った。

大丈夫。後、少しだ。後少し…!

もうすこ――…


「!!」

服をあと少しで掴めると思った瞬間、行き成り手が伸びてきて瞬く間に布団の中へと引きずり込まれてしまった。
そしてあっと言う間に組み敷かれる体。

お、起きてたのかよ!

「と、徹…ちゃ…!…んぅ…ッ!?」

驚いて咄嗟に布団の中から出ようとすれば、体を包まれた体勢のまま唇を強引に奪われた。
な、何が起きているんだ…?

真っ暗で何が起きているのか分からない。
でも俺を抱きしめているのは徹ちゃんなのは確かで。
徹ちゃんの温かい体から徹ちゃんの匂いや心臓の音が間近で伝わってくる。

嫌いじゃない…むしろ大好きな徹ちゃんの匂い。
それだけで意識が再び朦朧としてくる。

「徹、ちゃん……」

「……さっきの言葉、鵜呑みにしてもいいのか?」

「え……」

「後悔してももう遅いからな……夏野」

聞こえてくる心臓の音はとても激しく脈打っていて……徹ちゃんの瞳が普段と違く見えた気がした。



*



「はぁ…はぁ…」

生暖かい滑った何かが俺の体に触れていると言う感覚に鳥肌が立つ。

「…っ」

聞こえてくるのは粘着質な音。何度も何度も執拗に徹ちゃんの舌が手が俺の胸に触れて満遍なく這え刷り回っては突起の部分を舌先で弄ばれる。

……こんなに俺の胸に執着心があったのかと思う位。徹ちゃんは俺の胸を堪能しているみたいだった。
こんな小さい胸でも、徹ちゃんを満足させてあげる事は出来ているだろうか……。

「…ふ…ぅっ」

あの徹ちゃんからは想像出来ない少し強引な手つきが張った胸には少し痛い。
けれど、それ以上にその強引な手つきが徹ちゃんの心情を表しているかの様に思えて嬉しく思えた。
冷静さが欠ける位、徹ちゃんが俺の体に夢中になってくれていると勝手に解釈してしまうから。

「……夏野。腰、少し浮かして」

「…う、ん…」

気づけば徹ちゃんにいい様にされていて、俺と言えば言われた事に素直に従うしか出来なかった。
体が凄く熱い。夢心地な気分で果たしてこれは本当に現実なんかさえも分からなくなってきていた。

……ん?布団が何か動いてる。

いつの間にか徹ちゃんの顔がいなくなっていて。それが何だか寂しかった。けれど、見れてしまうのも何だか恥ずかしくて、ただただ奇妙に動いている布団を見ていた。

……ん?足を開かれた気が……?

「……うぁあ!?と、徹ちゃん!!!何してんだよ!!!」

初めて感じる奇妙な感触に思わず布団をひっぺ剥がせば、ありえない場所に顔を埋めている徹ちゃんがいた。

「ほぇ?何って――…」

「うわぁ!!そこでしゃべるなぁ!」

「ぐあ!……な、何をする夏野ぉ……」

思わずとある部分を蹴ってしまい、悶絶する徹ちゃんの姿。

「それはこっちの台詞だ!あと名前を呼ぶな!」

何してんだよ本当に!!
けれど、意図的ではないにせよ徹ちゃんのアレを蹴ってしまったのは罪悪感があった。

「うぅ……お陰で小さくなってしまった」

小さくって…確かにさっきは硬くて大きい感触が足から伝わってきたけれど……。…って。

「徹ちゃん」

「何だ、夏野よ……」

「もしかして……欲情してくれていたのか?」

この体に?徹ちゃんが……?
期待が少し高まる。こんな貧相ともいえる体でも徹ちゃんのは反応をしてくれていたのか?
それとも、夜でベッドの上だから…?よくよく考えれば暗闇の所為でよく見えないし…そう考えていた俺に予期しない言葉が降りかかってきた。

「……あのな、俺も一応男なんだが……好きな子にあんな格好であんな事言われたら欲情しない筈ないだろ……」

「は?すきなこって……?」

すきなこ?好き…好きな子の事か?

「え……ここまでしといて気づいてなかったとは……」

ガクリと項垂れた徹ちゃんの旋毛が可愛く見えた。

「……これでも色々気づいてもらえる様にしてたつもりだったのだが……接点持ったりとか」

「は、……は?」

「今日の事だって俺はてっきり、お前もようやく俺の気持ちに気づいて応えてくれたとばかり…」

接点持ちたくてって何だ。
じゃぁ、道迷った俺に態々付いて来てくれたのも、前年度の問題用紙をくれたのも…雨の日に傘を忘れた俺に傘を差してくれたのも……あれもこれもそれも全部…。

「……こうなったらはっきりと言わせてもらうけど、俺はお前の事好きなの。それもお前と最初に会った時から。所謂一目惚れと言う奴だな」

所謂一目惚れって何だ。けれど、真っ赤に染まった徹ちゃんの顔が可愛くて、思わずその言葉は飲み込んでしまった。

「い、いや、だって今まで部屋で二人っきりだった時も、泊まりにいってもそんな気配…それに胸触った時だって」

「胸?……あぁ…あれはそのあの時はお前の事が心配でだな……でもあの後に……」

「?」

「い、いやなんでもない……」

「じゃ、じゃあコレは?」

咄嗟に枕の脇にあったピンク色の包装紙を手に持ってみる。
誰かと使う為に持ってたわけじゃないのか?
むしろ誰かと使って残り1個だったとかと言う訳じゃ…。

「…そ、それは…俺とお前の関係に焦れたクラスの奴が、いい加減既成事実でも作って自分の物にしてしまえと無理やり押し付けて来た物っ!」

「……!」

取り上げられ、どこかに隠される。

……き、既成事実って…。生々しい言葉に思わず言葉が詰まる。

「……これでも結構理性を働かせていたんだぞ…。それに、さすがに15歳とやるのには抵抗と言うか何と言うか……なのにお前ときたら……」

「は?何だそれ……」

15歳と16歳って何が違うんだよ。
結婚出来る年齢だからか…?……ってそんな訳ないか…。

「にしても行き成り蹴りをかますとはなぁ……コレ役立たずになったらどうしてくれる」

「ご、ごめん」

「……ぷ。はは。何てな。大丈夫だって。まぁ、丁度よかったかもな。お陰でお前を無理やり抱いて傷つける事も無かったし」

「え…」

それはつまり……もうされなくなってしまうのかと不安な表情を浮かべれば、徹ちゃんは俺の頭を安心させるかの様に優しく撫でながら笑みを浮かべて、

「やっぱり、こう言うのは順序よく…でだな。だから――……」




*




……後、1ヶ月。後、1週間。あと、4日。

あと――…

心臓が五月蝿い。
言い様の無い不安もあるが、これからどうなるのかを考えるだけで体が熱くなる。

……徹ちゃんは約束、覚えていてくれているだろうか。

それを聞くことも出来ない状況に、俺は溜息を漏らした。
いや、覚えている筈だ。徹ちゃんは約束を破った試しが無いのだから。
あの時の事を思い出してしまい、体が少しだけ震えた。怖いと思う自分がいるのは確かだった。

けれど、今更撤回するつもりは無い。

最初に俺が言い出した事、それを徹ちゃんが叶えてくれようとしている。

"16のお前の誕生日に今度こそ抱かせてもらう事にするわ。……約束な"

その約束まであと――…。


「夏野」

「ん?どうした徹ちゃん」

「明日の夜は空いているか?」

「あぁ、8時以降になるけれど」

「なら泊まりに来いよ。……意味、分かってるよな、夏野」

耳元で囁かれるのは普段よりも一オクターブ低い声。

「……っ!わ……分かってる……ッ…てか名前で呼ぶなって!」

「ぬははは」


約束が果たされるまであと――…24時間後。


-END-

10.08.28-11.11.20.
Completion.
Happy end.

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