朝にはまだ早い


寒い。冷たい空気が肌に触れて、軽く震える。寝惚け眼で布団を引き寄せてふと隣の温もりに気付く。すやすやと寝息を立てながら眠る恋人。あーそういえばシたんだっけ。思い出して、一気に顔が熱くなる。


『かえでくん、ッ』


初めてだった。
白い肌がどんどん赤くなって、乱れた息がかかって。掠れた声で、俺の名前を呼んで。好きだった。愛おしかった。涙目で見上げるその姿に欲情して、何度も何度も求めた。


「あー…好きだな」


起こさないように俺より広い胸板に顔を寄せる。付けた痕を指でなぞって、キスをする。埋めるとこいつの匂いがして、胸が鳴った。変態かよ。多分、思った以上にベタ惚れで。どうしようもなく、頬が熱い。


「ん、……?」


もぞ、と身体が動いて、視線を上に向けたら眠たげな山口と目が合った。


「おはよ」
「んー…ん、」


どうやら起こしてしまったようだ。気をつけてたんだけどな。いつまでもこうしてるわけにはいかず、離れようとしたらぐ、っと引き寄せられて、すっぽりと腕の中に収まっていた。


「や、山口?」
「ん…さむ、」


そのまま再度寝息を立て始めてしまった。おそらくさっきのは寝惚けてたんだと思う。ああでも、こいつからこういうことをしてくるなんて滅多になくて。不覚にも照れてしまった自分がいる。


「二度寝すっか」


空は薄暗い。寝たところでまあ大丈夫だろう。今はもう少し、こうしていたい。

朝にはまだ早い


起きたお前は、きっと赤くなるんだろうな。

2016.03.23
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「見えない臓器の名前は」
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