「で、おたくは料理できるのか?」

「…あなたができるのでは?」

「………」

ヒューバートもアルヴィンも、自ら進んで料理をすることなどなかった。
料理上手な仲間がいたし、宿では女将が作ってくれる。

「…ま、なるようになるだろ」

「…そうですね」

チョコレートを湯煎し、溶かす作業まではできるのだ。
問題はそこから。

「100gとか量るの面倒だな。適当でいいだろ?」

「いいわけないでしょう!きっちり量りましょう」

元々性格が真逆なのだ。
何事もなく料理ができるなんて、そんなことはありえない。

「じゃあ勝負しようぜ。どっちが上手く作れるか」

「やってやりますよ!」

分量をきちんと守った料理か、目分量で作った料理か。
審判はいないものの、彼らの勝負は始まった。
しかし、当然ながら分量を守った方が上手く作れるわけで、勝敗は言わずもがなという感じだ。

「少し形は歪ですが、結構上手く作れたと思いますよ」

「………」

彼らが作ったのはクッキーだった。
ヒューバートの方は形は少々歪だが、他は申し分ない。
一方、アルヴィンの方は形云々の前に、見た目がパサパサしていそうというか。
これは生地作りに難があったと思われる出来上がりだ。

「あー、これでジュードにやる分はなくなっちまったな」

「また作ればいいじゃないですか」

「分量を量るとか、俺には合わない作業なんだよ」

「…わかりました。手伝いますから、作りますよ」

この後、ヒューバートの小言が飛び交う中、調理が進んでいくのだろう。
そして完成後は、愛しい人の元へ行き、少し歪なクッキーを渡すのだ。
そうすればきっと、恋人たちはこう言うだろう。
「美味しいよ、ありがとう」と。





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(幸せそうな顔が見れるのなら、)
(手作りも悪くないと、)
(そう思えた)





fin



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