その答えに触れて | ナノ


▼ 7.並盛に君臨する暴君

「…おーい」
「んんー…」

朝、目が覚めもやはり現状に変わりはなかった。もしかして夢だったのかもという確立はこれでぶっ潰れた。もえは沢田奈々にお願いされて綱吉を起こしに参ったわけだ。ブラウンの髪が枕抵抗を物ともせずに今日も立派に上を向いている。ランボ達はもう起きているし、これ以上待たせたらリビングにいるリボーンが拳銃片手にモーニングコールしかねないので、気持ち良さそうに寝ているところ悪いがこれは綱吉の為である。

「リボーンが」
「!!!おはよう!」
リボーンの名前を出したら飛び起きるってビアンキから教えられた。

「あ、もえ!起こしてくれて、ありがとう」
「うん、下で待ってる」

綱吉とは昨日もえの並中編入が決まったので朝一緒に登校すると約束したのだ。運が良ければえりかにも会えるだろう。それにしても不安だ。もえは朝から元気良くはしゃいで走り回るランボとイーピンを目で追いかけた。

「もえと行くなら遅刻もしないかもしれない」
「いつも遅刻魔なの?」
「徹夜でゲームとかしちゃったりして、寝るのが遅くなってさ」

綱吉君はバツが悪そうな、恥ずかしそうな顔で頬っぺたをぽりぽり掻いた。

「おい、あのダメツナが女子連れてるぞ!」
「誰?見たことなくね?」

ある意味有名人な綱吉君。女子って、多分ウチのことだな。改めて並盛中の制服に視線を落とした。可愛い制服だなぁ…。こう、漫画でよく見てた学生って感じで。

「あ!そうだ!校則違反とかしてない?」
「え?」
「学校にダメなもの持って来てたり、付けてきてたり」
「……銃はいいよね?」
「持ってきてたのー!!?いいわけないでしょー!!!」

顔を真っ青にした綱吉君。これがなくてどうやって用心棒が務まるのか。というか、これはもう体の一部といっても過言ではないのだ。おはようからおやすみまでずっと肌身離さず持ち歩いている。勿論、外敵による突然の敵襲に備えてぶっ放せるように寝る時も一緒だ。綱吉君も今更どこにそれを置いていくのか検討もつかないようだった。当然、一般人の世界で拳銃なんて転がってたらパニックになりかねない。

「初日から風紀委員の持ち物検査なんだよ!!?」
「…………まじか!!」
「まじだよ!あーもうどうしよう!雲雀さんがいたら絶対誤魔化せないよ!!」
「さすがにスカートの中まで検査しないでしょ」
「え!?そ、そりゃそうだけど」
「希望を持つよ綱吉君」

綱吉君はウチより緊張した面持ちで、最終的にはガタガタ震えながら校門まで辿り着いた。……すごい、黒髪リーゼントの陳列棚よろしくザッと並んだこの黒い集団。丈の長い学ランに腕章は"風紀"の二文字。ははぁ…生で見る風紀委員はこんな…。

「見かけない顔だな、並盛中の生徒じゃないだろう」
「急な転校で今日初めて登校したんです」
「……嗚呼、そういえば今日か」

草を咥えてる草壁さんは納得したように頷いた。

「報告では二人と聞いていたが?」
「あ、それなら別々なので後から…」
「ワオ、君、そんなもの所持してどうする気だい?立て篭もりでもするの?」
「え?しないしない、これ護身用……………………て、?」

やけに、足がスースーする。スカートが持ち上げられている感覚がする。しかも、え、なに。うち今誰と会話した?…今なら、ホラー映画の主人公の気持ちがわかる気がする。恐る恐る、後ろを振り返った。

「校則違反どころか、銃刀法違反だよ君」
「きっ、ぎゃああああああ!!」

丸い頭の形。艶のある黒髪のストレート。切れ長の目に学ランを肩に靡かせてその人は朝日の光を黒に吸収させてそこに居た。漫画の中でも大好きと豪語する…雲雀恭弥。…なのに、その細長い指に摘ままれているのは紛れもない、ウチのスカートなわけで。一応日本女子としての恥じらいも勿論あるんだ、それになんで憧れの雲雀恭弥に!雲雀恭弥に…ッ!!!

「なんなんだこの出会い方はー!!!」
「煩い」

雲雀恭弥、並盛の風紀を取り締まる絶対的秩序。泣く子も黙る、暴君様なのだ。希望もなにも、あったもんじゃない。破廉恥だ!雲雀恭弥!!


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