その答えに触れて | ナノ


▼ 6.お世話になります。

「大丈夫かな、えりか」
「…ごめん、俺がなんだか余計な事言ったからこんなことに…」
「え!?いや、綱吉君のせいじゃっ…」
「でもあの子、とても不安そうだったし…山本はすげー良い奴だよ?だけどやっぱり初対面だし、不安…だよね」

綱吉君はしょんぼりと頭を垂れた。むしろそんな初対面を家に置いてくれること事態がすごく助かってるし、有難くて。だからこんな我儘は言いたくない。…本当は、本当なら、勿論一緒に居たかったけど、永遠の別れじゃない。

「えりかなら、大丈夫!次会った時にはケロっとしてるよ」
「ケロっとって…」
「大丈夫、こういうことはあの子、腐る程慣れてる筈だから」
「…そっか、そうかもしれない」

綱吉君は自分にも覚えがあるのか、そう呟いた。同じボス同士で多少なりとも会話をしていきなり訪れた役目、ボスとしての本音を多分綱吉君は少しでもえりかに打ち明けていた筈。

「だから、えりかは大丈夫」

それに、ずっと夢に見るくらい好きな山本武の側にいられるんだし、こんなチャンスは見逃せない。ほんっとうに不安そうだったけど。

「えっと、これからよろしく綱吉君」
「あ、うん!よろしく!もえさん」
「ウチも綱吉君って呼んでるし、もえでいいよ」
「…わかった、じゃあ、もえ」

綱吉君に連れられて賑やかに登場したランボとイーピンちゃんと遊んだり、ビアンキさんの歓迎と称したポイズンクッキングを食らったり。初対面っていうのに、本当に優しい人達だ。明日から学校と言われたけど。…どんなところだろうか。漫画では生徒達が座学で授業を受けたり体育でスポーツをしたりしていた。ウチらには馴染みのない場所だ。…うまくやれるだろうか…。そして、ウチは並盛中学で、彼に会えるだろうか…。



「それならそうと早く言えって武ぃ!」
「だから言ってんだろー?」

竹寿司ののれんを潜れば彼にそっくりの顔が愛想良く、活気に満ちた顔で振り返った。あたしを見つけた山本父はカッと目を見開いた。…どうやら、なにか勘違いをしていたらしい。恥ずかしくて、つい俯いてしまう。

「狭いとこだけど歓迎するぜ!武!お嬢ちゃんに妙なことすんなよ!」
「ハハハッ!なに言ってんだよ親父!」
「ご迷惑をおかけします、よろしくお願いします!紅林えりかと言います」
「いーってことよ。困ってんだろ?助けるのは当たり前だ。よろしくな」

もう一度深く頭を下げて、こっちだと軽く手を上げる山本の後を追った。階段を登った上が住居になっているみたい。お店の中は知ってたけど、上はこんな風になってたんだ…。山本の事をまた一つ知れた気がして、少し嬉しい。

「んー」
「どうしたの?」

自分の部屋の前で止まる山本。襖は開いていて、その中を見て難しい顔をしているみたい。

「…なあ、えりか」
「な、なに?」
「片付けるの手伝ってくんねーか?」

朗らかな笑顔が向けられた。…片付け?確かに良い感じに散らかっているが。

「んー、布団置くならこうか?」

角度を体を使って測ろうとしてる山本の行動に、まさか、と思う。そんなことは、え、ないだろ流石に!

「や、山本、なにしてるの?」
「え?だってお前もここで寝るしどうゆう感じで布団敷いたらいいかなって!」

お泊まりみたいで楽しいだろ?…なんて、本当に楽しそうに笑う彼の笑顔に釣られたのか、あたしも渇いた笑い声を出した。だめだ、これ。あたしには刺激が強過ぎる…!!!

「あ、たし!端っこでいいから!」
「端っこ?端っこ行ったら話できねーじゃん」

正気かこいつ!ど天然だからか、わかってないのか。中学生男女(初対面)が一緒の部屋で寝るというところから間違ってるんだ!なのに、当の本人はお泊まり気分だ。…嗚呼、あたし、寝れるかなあ…。ドキドキして寝れないかもしれない…。

「疲れただろ?早く休んだ方がいーぜ!」

俺も試合の後とか寝たら元気出るしさ、と。また輝く笑顔を向けるのだ。


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