その答えに触れて | ナノ


▼ 4.誘い

「もー、ツナも2人もどこに行ったかと思ったわ!さあ、皆いーっぱい食べてね」

現在進行形で、なにをどう説明すればいいのか。何故かまた沢田宅でテーブルを囲んでいるのか。獄寺と山本、リボーンも加わってはいて人数は多いはずなんだけど、やけに静かな食前。

「えーっと、た、食べよっか!」

綱吉君が気を利かせまくりでかなり冷や汗かいてこの場を凌ごうとしているのが可哀想な程伝わってくる。冷や汗をかくのはこっちなのに。

「もえもマフィアなんだな」
「まあ、似たようなものです」
「お前もマフィアごっこすんのかー」
「ちげーよ野球馬鹿!ばーか!」

極道というのはイタリアでいうマフィアとそう変わりはない。リボーンはイタリアの人だ。自己分析した結果が同業者なら話は早い。

「そして、えりかは昔から代々名刀、紅鬼刀を受け継ぐ由緒正しき名家出身」
「やってることは…刀を護る事と、殆どもえと似たような感じ」
「ならツナと同じだな」

ニッと口元を引き上げる。クリクリした黒目は可愛らしい、可愛らしいけど、なにか企む目だ。

「えりかは刀を継いだ当主なのか?」
「うん、先代から刀を受け継いだ時からあたしが当主」

調べても出てこないとわかって、綱吉君達に話しても支障がないと判断したのか、特に抵抗もなく話す。良かった、意固地にならなくて。

「ツナの先輩、だな」
「は、はあ!?なに言ってんだよリボーン!」
「えりかはボスってことだ。ボンゴレのボスにいずれなるツナのちょっとした先輩に当たるぞ」
「だから俺はマフィアのボスにはならないって言ってるだろー!?」

頭を抱える綱吉君に怪訝な表情のえりか。えりかには何故、綱吉君がそこまで当主の座を拒むのか理解出来ないようだ。漫画で読んでいても、その拒む理由を知っていてもいざ目の前にその光景が広がれば、やはり首を傾げるのかもしれない。

「えー…そんなに嫌?」
「い、嫌に決まってるよ…俺はほどほどに稼いで、普通に幸せになりたいって…普通が一番でしょ?」
「そうかなぁ…その御家に生まれたなら普通は継ぐと思うけど」
「でも俺なんて、急にだよ?急にリボーンがやってきて」

立場はボス同士、気持ちは全く正反対。獄寺は沢田さんのお料理をありがたく頂いていて、山本はえりかの隣の席で綱吉君との会話を聞いてるのか聞いていないのか、箸を動かしている。リボーンだけが、その2人に意味深な笑顔で見つめている。なんだろ、この展開カオス。憧れは憧れの世界だ。漫画の世界だけど、どうにも普段と変わらないリアルは何処へ行っても同じであるということを今学んだ。

「そーそー、いるんだよねぇ。家庭教師!あたしなんか嫌過ぎて抜刀」
「そんなことしたらリボーンに殺されるな…」
「教師に歯向かう度胸も持たないとね!」
「それめちゃくちゃだよ…」

ボス同士は、されどボス同士。お互いの苦労を曝け出すこの状況。そろそろ獄寺君の顔がえらいことになっているのでこれ以上の会話はやめた方がいいだろう。

「もえ!料理冷めるぜ!」
「…君ってさ、悩みなさそうだよねぇ…」

ん?と笑いながら首を傾げたあざとい山本に、今日何度目かの溜息。

「てめえ、さっきから黙って聞いてれば10代目に馴れ馴れしく話しやがって!」
「や、だって聞いたところ、あたし達同い年だって」
「たかが中小のジャパニーズマフィアのボスと一緒にすんな!!このお方は未来の大ボンゴレを背負っていかれる…」
「わー!獄寺君!」

力説する獄寺を止めようと慌てだす綱吉君の心労はどこまでも深いのだろうな…。

「大体はわかったぞ。もえ、えりか」
「え?」
「はい?」

リボーンは赤ん坊にあるまじきニヒルな笑みを浮かべて言った。

「ツナの用心棒をする気はねーか?」


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