その答えに触れて | ナノ


▼ 35.毒雪

「…もえ。試合放棄ってどう思、」
「現実逃避しないでくださいませ」

まじかよ。風のフィールドもやばかったけど、これもえげつないともえも目ん玉剥いた。えりかもフリーズ状態である。

「今宵のフィールドは雪の守護者対決に相応しく考え出された、"コンゲロント・ネーヴェ"です」
「こ、こんげ?」
「凍る雪っつー意味だぞ」
「フィールドはプールを利用した超絶極寒の中で行われ、対決が長引けば長引くほどに降り積もるのはただの雪ではなく毒を吸わせた人工雪です」
「人工雪!?」
「雪の守護者の使命とは、"歴戦に降り積もりし静寂と赦しの雪"」

ファミリーを見守り燃えゆく戦火を赦し、鎮める淡き雪。

「豪勢だね」
「へー王子初めて聞いた。」
「ヴァリアー!!」

ザンザスの眼光が見下ろした。来たんだな、とリボーンが呟く。何故かえりかに執着するザンザスがなにを見ているのか。それはわからなかった。えりかは一度深く深呼吸して背負った刀を箱から取り出した。

「えりか。いける?」
「た、多分…情けない話だけど少し体調悪い」
「!…なんか変なもの食べ…」
「あたしをなんだと思ってんの?え?」
「薬とか持ってないよ?」
「もう飲んでるよ。効かないんだこれが。ウケる」
「ウケねーよ」

本気で体調不良でやる気も駄々落ちてそうに深い溜息を吐きながら刀を杖代わりにする姿は実に不安感を煽られる。

「えりかーッファイっオオー!!!」
「極限いってこおおーい!」
「行ってらっしゃいなのなー!」
「へへへ、いってきます」

山本にぶんぶん両手を振って見送られて少し元気が出たらしいえりかはひょこひょことプールに入っていく。もえ達はプールを挟むような特設観覧席で勝負を見守る。ヴァリアーは向かい側だ。

「!向こうの人!風戦の人とそっくり…!?」
「言っただろ。人造人間なんていくらでも作れるんだよ」

ヴァリアー側から出てきたのはスカルピオーネと同じ顔をした女の子だ。違うのは髪型と色くらい。

「……これが完全なロボットならとやかく言われないものを、生身を使ってしまってると」

だからもえや沢田君達が怒るんだよ。

「雪の守護者、紅林えりかVSファルディネ戦闘開始!」



毒雪……長引けば長引く程お互い不利になるどころか命の危機にすら晒されると。まるで獄寺の時みたい。

「……ねえ。やっぱりそうだよね」
「相手の武器が、えりかの武器と瓜二つ被ってやがる」

瓜二つだ。刀身の色味が違うだけで。ここまでも同じものが?偶然にしちゃ出来すぎだ。ウチの時にしたって。

「スカルピオーネといい、あんたといい……」

凍ったプールの表面で対峙した。この氷、あまり激しく動くと割れる。お互い武器は刀とはいえ、水の中で刀を振り捌ける腕力はギリギリだ。山本みたいに男の子だったら話は別だけど。

「ならあんたも自分の命は省みない戦闘をする」
「ボスの命令は、絶対的」
「そうだろうね。でもあたしも」

黒刀。ヴァリアーは戦闘服だけじゃなく武器まで黒いのか。ウチらが最近まで通っていた戦闘学校も黒で統一されたコートを支給された。返り血が飛んだとしても目立たないから。理由は至っていつもシンプルだ。

「当主として、負けるわけにはいかないんだよ。」

ただでさえ足場の悪い氷の戦地で互いの刃が激突した。甲高い音を立ててギリギリと押し出す。一度引いたのはえりかだ。力を込めて押し返しバク転で後退した。

「……ちがう。貴方じゃない。」
「はい?」
「ボスが仰ってたのは……貴方じゃない。」

!雪が降ってきた……!これはすべて毒を含んだ人工雪。

「なら引きずり出すまで……」
「何言ってるのかイマイチよくわかんないんだけど、取り敢えずやれるもんならやってみろ」

怪我をしていたらその傷口に毒が染みて、戦闘が長ければ長くなる程2人の命も危ぶまれる。えりか……早いとこ決着つけなきゃやばいよ!

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