その答えに触れて | ナノ


▼ 3.警戒心漂うスモーキン

「俺、野球部でさ!女子で野球してるやつ少ないから嬉しいのな!」

キラッキラの弾ける爽やかスマイル。純粋無垢な年相応の顔に引き攣り笑いのあたし。嫌だわ…彼のコスプレイヤーさんでもこの顔は見られたくないわ…

「ほい!」
「あ、ありがとう」
「おう!にしてもその制服見たことねーけど、並中生じゃねーよな?迷子か?」
「え、いや、別に迷子ってわけじゃ…」
「えりか!」
「!、もえ!」

山本コスプレイヤーの後ろからもえが走って来ていた。後ろにはぜぇぜぇ息苦しそうな綱吉レイヤーもいる。

「心配したんだから!勝手に飛び出してかないでよ!」
「ご、ごめん」
「あ、よ、良かった…見つかって」
「ありがとう沢田君、本当に迷惑かけました」

もえが大人な対応かましている時に、山本レイヤーはきょとんとして口を開いた。

「ツナの友達か?」
「山本!練習はもう終わったの?」
「おう!今日は早くな!」

ほのぼのと話す彼等を横目にあたしの顔をがっ、ともえは正面に向けた。

「なにあれ、山本武!?良かったじゃん!会えたね!」
「なにいってんの。これは大型コスプレサミットで目の前の2人もコスプレイヤーなんだよ」
「ごめんなに言ってんのかわかんない」

冷静なツッコミが入った。

「ツナの友達なら挨拶しねーとな!俺は山本武!野球してーなら歓迎するぜ!」

あたしの刀を今尚野球バッドだと信じて疑っていないのだ。

「えっと、改めて俺、沢田綱吉」
「郷士もえ、よろしくお願いします。さ、えりか!」

今度は逃がさないとばかりに首根っこを掴まれてしまえば仕方ない。

「紅林えりかです」

沢田君に対して失礼な事を吐き捨てて飛び出したと言うのに彼はよろしく、と言って笑っていた。まだ全然信じてなんてない。だけど、…その笑顔は嘘じゃない気がしたから、少しは信じてみることにしてみる。この世界が、自分達の世界と違うと言うこと。憧れた世界だということ。

「10代目!」

どこからか嬉々としたハスキーボイスが聞こえてきた。変なあだ名で呼ぶのは一人しかいないこの分かり切った登場人物にあたしももえもつい目を合わせる。

「偶然すね!俺もちょっとそこまで出かけてきたんですよ!」

ある意味、純粋無垢な笑顔を浮かべる顔がこっちを向いた瞬間それは一気に豹変。

「んだてめー等。10代目になんか用か」
「あー…いや、用っていうか…」
「違うよ獄寺君!この子達は…」

また一からの説明を沢田君がしてくれてその話を聞いた山本もおお、とか言いながらぱちぱちと手を叩いて賞賛してくれた。

「お前ら強いのな!ツナの周りにはいつもすげーやつばっか集まるぜ!」
「10代目のお母様を……ふん」
「確かに見たぞ」

しゅたっと物陰から出てきたその黒い塊は一回転して山本の肩に飛び乗った。反射的に刀の柄に手をかけたあたしは多分職業病。

「お前ら普通の女じゃねーな」
「り、リボーン!」

ボルサリーノのつばに片手を乗せて愛くるしい大きな黒目を覗かせたその赤ん坊は口元をきゅっと上げた。

「ちゃおっす」
「お前、なんかいないと思ったら!」
「リボーンさん!お疲れ様ッス!」
「よっ!小僧!」

黒目は相変わらずあたし達を品定めするように固定されていた。これも反射的になんだけど、こういう目をされるとあたし達は身構えるものだ。あたし達も、この人たち同様に"普通の人"ではないのだから。

「そこのお前は刀、そっちは拳銃だな」
「!!また勝手なこと言って!」

沢田君が呆れたような顔をしたけど、生憎、あたし達は身構える以上の反応を示してしまっていた。まさか、なんでわかった?あたしの刀は持ち歩いていても不自然ないように隠してあるし、もえに至ってはその愛銃は足の付け根にあるホルダーに隠してあるというのに。ビクッと反応してしまったが最後。獄寺の着火済みのダイナマイトが宙を舞った。

「ひー!!なにしてんの獄寺君!!」
「リボーンさんの言ったことが本当ならこいつらは刺客です!下がってください10代目!」

そんなつもりは一切ない。ただ単に縁があって沢田家と関わることになってしまっただけだ。

「果てろ!」
「…もえ!着火済みのダイナマイトはあたしが斬る!」

入れ物から刀を抜いて着火部分を斬った。ぼとぼと落ちる不発弾。完全には斬れなかったダイナマイトが数発爆発した。もえに腕を引っ張られて地面を蹴って後退。

「な…!刀!リボーンの言った通り…」
「あれ!お前のバッドじゃなかったのか!」
「なに言ってやがんだ野球馬鹿!こいつらは刺客だ!もう一度問うぜ10代目になんの用だ」

完璧に疑われた。もえも気のいい対応できないようだった。元はと言えばリボーンが余計な事を言わなければ…。山本の肩に乗ってるリボーンに目を向ける。

「やっぱりこっちの人間だな。フリーの殺し屋にしては最初から殺気も感じねーし、ツナを殺る気ならこんなダメツナ一発K.Oだ」
「一発K.Oって…」
「わざわざ二手に別れる必要性も感じねーし、お前ら何者なんだ」
「…ウチは」
「もえ!」
「でも、」
「ここが何処だか分からない以上、簡単に口を割るのは違うんじゃない?」
「…いや、今だからこそ言う。ウチは極道家郷士組組長のその娘、郷士もえ」

普通じゃないあたし達は、必要以上に他人にその素性を明かす事を禁じられて育った。特にあたしは。

「郷士組?聞いたことねーな」
「色々事情があって…」
「次はお前だぞ」
「…紅林家、次期頭首の紅鬼刀を継ぐ紅林えりか」

本当なら絶対口を割ってはいけないけど、ここで言わないと、どうなるか分からない。もえの眼に負けて、あたしも素性を明かした。それに、言った処でここが別世界なら存在なんてしないだろうと思った故の決断だった。


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