▼ 30.はじめて見た笑い顔
「もえ!背中の傷は大丈夫?」
「おー綱吉君。大丈夫大丈夫ー」
風の戦いが終わった後に膝が笑いやがった。アホかウチ。病院に強制収容されたらしい。背中にはがっちりと包帯が巻かれている。肩にリボーンを乗せたディーノさんと綱吉君が見舞いにいらした。
「明日はだれ?」
「雨戦だぞ。山本だ。」
「山本かぁ…えりかがストレスで肌荒れ起こしそう」
てかあいつ来いやああ!喧嘩の続きするっつったろうがああ!思い出したらムカムカしてきた。両手をバフバフと掛け布団に振り下ろした。
「ツナ。雪の戦いが始まる前にハッキリさせとけよ」
「え?なにをだよ」
「やつは現段階、雪の守護者として戦ってくれるが、ファミリーに入るがどうかが曖昧なんだ」
「よく言うよ。いつも皆を巻き込んでおいて」
「今回は勝手がちげーぞ。えりかはボンゴレと縁はなくとも現首領…つまりボスだ」
ひとつのファミリーを束ねる首領が綱吉君のファミリーに入るということ。それは間接的傘下として屈服したことを意味する。この世界に彼女の一族はいなくともその事実を傍受してくれるのか、ボンゴレファミリーの守護者として綱吉君を改めてボスとして認めるのか。……自分のボスとしてのプライドを捨てて。
「ボスとしてならえりかの方が先輩だって言っただろ。ボスの任期が長ければ長い程自分の立場に責任を持ち誇りを持つもんなんだ」
「あぁ、リボーンの言う通り。簡単に退けねーもんなんだよ。」
壁に凭れていたディーノさんも頷いた。自分を持ち上げる部下達に報いようと、死ぬ物狂いで組織を守るのが首領。
「お前はボスのえりかを屈服させられんのか?」
「…ボンゴレのボスとか守護者とかそういうんじゃなくて。ただ…友達として一緒に戦うんだ」
嗚呼、その言葉……えりかが聞いたら、嫌がりそうだなぁ……
「ワオ。先客かい?」
「ひひひひひヒバリさん!!!」
「ひえー!」
「ちゃおっす雲雀」
おっと、思わず悲鳴が。病室の引き戸をノックもなしに不躾に開け放ったのは我らが兄弟子、雲雀。なんのチェックに来やがりましたのか。
「俺が呼んだんだ。まさか素直に来るとは思わなかったが…」
「ディーノさん、今ここでウチがサンドバッグにされたその暁には化けて出てやりますから」
「ジャッポーネのゴーストか?」
「いや、もういいです」
「ふーん。背中か。腹に食らえば良かったのに」
「つまり死ねと?」
もうやだこいつら。日本語通じない。通じる相手じゃないのはわかったけど日本人の雲雀にも通じない。
「……ま、君にしてはやった方だよ。」
「じゃあね」と黒い学ランが翻る。あの仏頂面が、愛想など微塵もないあの顔が。
「ディーノさん。雲雀ってやっぱりやばいですね」
ほんの少しだけ、笑ったとか。
「はっくしょい!あ、誰か噂してる…」
「お前そんなん信じてんの?」
城島君改め、犬お兄ちゃん……冗談です。げふん。が隣でまた髑髏さんに献上したお菓子を引ったくり貪り食っている。両手食い。
「……明日は紅林の好きな人が勝負するんでしょ…?ここにいていいの…?」
「さりげなく暴露しないで」
「ひょー!刀野郎が好み!?笑かすびょん」
「大気圏にホームランかまされてぇか」
「一緒に住んでるって…」
「髑髏たん、シャラァーップ!」
「ぎゃははっ!大スクープらー!!」
なにがウケたのか、微塵も理解出来ないが酸欠状態でヒーヒーしてる城島君に柿本君がやれやれと首を振った。全く救いようのない、めんどい。彼の目がそう言っている。
「てか馬鹿にすんなし。山本とかめちゃくちゃ強くなったし。城島君に負けてねーし」
「紅林、中指立てちゃだめ……」
「ひゃっひゃー!バカな髑髏に言われてやんのー!ププーっ!」
「致命的に悪いのあんたの頭なんだけど!?何歳児!?城島君!?」
「見てるだけでめんどい……」
「とにかく!山本が負けるなんて事は万が一にもナッシング。そんなフラグ立つ前に叩き折ってくれるわ」
そんな可能性、ないんだから。山本は必ず勝つ。最近自分ので精一杯で山本と竹刀を振るう事はなかったけど、このままの通り時雨蒼燕流をものにする。一度きりの継承を受け継ぐんだ。
「紅林……その人の話してる時かわいい」
「ぎゃーっはっはっは!かわいい!?眼科行ってこいっての!」
「低脳!城島君まじ低脳!」
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