その答えに触れて | ナノ


▼ 29.確執

「とったよ」
「あああ良かった……!」

「風の守護者の対決は郷士もえの勝利です」

綱吉君て、本当に心配症というかお人好しというか。まだ会って少ししか経ってないウチをこんなに気遣うなんて。

「ウチ頑張ったでしょ」
「いや、あの、ツッコみたいのはそこじゃないよね。思いっきり最後に出したのトンファーだよね」
「だから言ったじゃん。兄弟子に釘刺されてるから負けられないんだって」
「さすがにそこまで仲良くなってるとか思わぬフラグにそこだけ衝撃的だった」

まるでエイリアンを見つけたような顔やめてほしい。

「使えなさ過ぎだろォが。」
「まさかここまで落ちぶれているとは思わなかったんだよ。ボスへの忠誠心が薄れてるね」
「俺が針千本のサボテンにしてやろーか?」
「使えぬ不良品はヴァリアーにはいらぬぞ」

ゴーラモスカの指先の銃口が向く。ルッスーリアの時と同じように粛正するつもりなんだ。負けたから。しかも幹部のルッスーリアの時とは比べ物にならない。不良品とまで言い切ったんだ。このままじゃ…!

「待ってよ。別に他所に口出しするつもりなかったけどそっちのボス…ザンザスへの忠誠心が薄れてるなんて嘘だよ」
「ムム。なんだい君。」
「さっきの戦い見てたらわかるはず。自分の身を守ろうとしないでウチに向かってきた。リングを取れさえすればいいみたいに」

それこそ、命を捨てているような。

「スカルピオーネは、このためだけに作らされた予備兵だよ。」
「作らされた…?」
「風のリングと雪のリングは初代以降適合者が現れなかったんだ。そのリングの基準を満たすものが一切謎に包まれていた」

時を経て、6つのリングが継承されていく中で2つのリングは適合者が見つからないまま、代々のボンゴレのボスと門外顧問で保管してきた。

「僕達もそのリングの存在は知っていたとも。だからこそボスがボンゴレの頂点に立つ時。必ず現れる2つのリングの為に僕達は風の守護者と雪の守護者の"適合者"を編み出したんだ」
「やはりな。通りで人間の気がしねーはずだ。」
「どういうこと?」
「お前が戦ってた女は、人間じゃねぇ。よく似せてるが作りもんだ。」
「作り物……?嘘でしょ、そんな技術…」

だって、血だって。それに、じゃあ最後のあの謝罪は?人間じゃないならなんで人間みたいな、言葉を濁した……心のある言葉を口にする?

「まぁ、半分くらいは人間なんだよ。人造人間は知ってるかい。」
「何のために……そんなことを」
「言ってるだろ。風のリングと雪のリングを所持させるために"作った"って。生身じゃうまくいかないからね」

軌道修正の範囲を超えてる。つまり、ウチらのせいで2人の人間の人生を変えたんだ。原作にボンゴレが人体実験している記録は公にはない。そういう未来にしてしまったんだ。スカルピオーネも、元は人間で。リングを保持させるためだけの存在として……ここに立ったんだ。それを自分でも分かって……分かった上で。

「困ったものだね。ゴーラモスカ。始末していいよ」
「待って!」

ぐっ。腕を掴まれた。当然スカルピオーネを助ける事は出来ず、ゴーラモスカの銃弾は彼女に被弾した。どちゃりと嫌な音を立てて血だまりに沈む小さな体。湧き上がる怒気が腕を掴んだ対象に向く。

「なんで止めたの……えりか」
「軌道修正するんでしょ?人造人間なんて原作になかった。向こうが始末したんだから手間が省けたんだよ」
「そういう事言ってるんじゃない…!あの子は人間だった!」
「だから?あたし達はそういう奴らを相手にしてる。カタギじゃあるまいし変なこと言うのやめて。」
「ふ……ふたりとも!今は喧嘩してる場合じゃないよ!もえは早く手当てしなきゃ!」

ウチらの間に綱吉君が割り込む。そういえばウチ背中に穴空いてるんだった……。思い出したら急に痛くなってきてその場に座り込んだ。

「……後で覚えてやがれ」
「上等。今は沢田君のいうとおり……すんげー血が出てんですけどお!!!」
「まじかああ!!!超痛い!!!」

あ、倒れた。そう思った瞬間意識が持っていかれた。

「うお"おい!やはり貴様は一味ちげぇな」
「あたしは仁義もなけりゃ義にも殉じない。」
「クソボスが欲しがるわけだ」

…あたしは、もえみたいな人情はない。敵に情をかけることもない。そう教育されているからだ。洗脳と教育は紙一重ともいうがまさにそれ。当たり前だと教え込まされてきたものを否定されるのは許せない。…それをわかってくれるのは、同じように教育された連中だけ。

「明日の対戦カードを発表します。明晩は…」

雨の守護者の対決です。


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