その答えに触れて | ナノ


▼ 27.風の吹き荒れ

「骸様と雲雀さんて仲悪いんだってー」
「当然ら!あのアヒル。骸様にボッコボコにされたんだびょん!」
「……犬、骸様に怒られるよ」
「あ、当事者なんだね」

骸様の体がまだ元気だった頃の話。今では牢獄に囚われて髑髏さんなしじゃ外出もできないという……外出というか、なんというか。……出現?

「今日……紅林の友達の番なんでしょ……?ここにいていいの?」
「すっっごく心配しかないんだけど、でももえだから大丈夫なんじゃないかなって。トントン拍子で上手くいくんじゃないかって思うんだ」
「薄情もん」
「城島君シャラァーップ」
「そいつの修行は上手くいってるの?」
「雲雀が面倒見てるんだって。少し吃驚じゃない?」
「あぁん!?なんらそれ!?」
「紅林って複雑だね立場的に」
「複雑もなにも。もえはもえで、あたしはあたしの人間関係だから大丈夫!」

それはそうと……今日本気で大丈夫かなもえ。



「よっ」
「あれ?先に行ってても良かったのに。あたし遅くなるから」

黒曜から戻って一旦山本の家に帰ったら階段に山本が座り込んでいた。片手を上げて挨拶をくれる。目の保養。スマイルごちそうさまです。

「今日もえの勝負だろ?お前心配してんじゃねーかなって。んで、それで俺も心配した」

ンンンッ!!!くそかっこいい。ぶっちゃけそこまで気に病んでない!病んでないけどやだもうかっこいい。にやけそうになる顔を必死に真顔に戻した。

「確かに心配だけど大丈夫って気も、あるようなないような……」
「ヒバリにコテンパンにされてなきゃいーな」
「ご最も……」

そろそろ行こーぜ。すいっと立ち上がる長身に押されて学校へ向かった。そういえばヴァリアーの風の守護者はどんな人だろう。見なかったけど……。

「遅れてすまん!」
「ファラオーッ!!!」
「ち……違うッス!オレっす!ロマーリオのおっさんがこれが男の治療だとか抜かして、大雑把に包帯まきつけやがったんすよ!」
「ご……獄寺君!?」
「獄寺!?イメチェン激しいよ!?」
「誰がイメチェンだ!」
「……というかもえは?まだ来てないの?」
「俺達もいま来たところだ」

会場は……。

「お待ちしていました。風の守護者の戦闘フィールドはグラウンドになります。」
「チェルベッロ!」
「な……なにあれ」

…もえ…あなたの戦闘フィールドは結構えげつない。眼下に広がったグラウンドは茨のような棘が地面から生えたように天を向き、金属だろうか鋭利に光る。その間に均等に空間を囲うようにいくつもの大きな筒が並べられている。

「風の守護者の対決にふさわしく設計したストームジャングルです。」
「この棘中で戦うというのか!」
「……もしかしてこの筒から……」
「四方八方ランダムに風が吹き荒れる設計となっており、さらに視界不良の中で特別硬化させたこの棘もランダムに守護者に襲いかかります」
「ちょっと!そんな設計おかしい!」
「ルールは私達ですので」

「やめとけ御当主殿。」
「!ディーノさん」

抗議しに行こうと片足を出した途端腕を掴まれた。ディーノさんだ。

「ディーノ。もえの修行は成功したのか?」
「いや、俺がみてやれたのは少しだったからな。むしろあの子の修行を見てたのは恭弥だ」
「ひ、雲雀さんが!?」
「あいつが人にもの教えるとか想像つかねー…」
「なんだかんだいい兄弟子だぜ?あいつ」

獄寺の時のようにもえが時間内にフィールドに現れなければヴァリアー側の不戦勝……

「おいおい。まさか今度こそ逃げたなんてオチはねぇよな?」
「君達の風の守護者、そうとう緊張していたみたいだしね」
「ししっ朝起きたらリングゲットしてんの。王子すげー」
「くそっあんにゃろう!」

雲雀との修行で遅れて?いやでも、もえは敵前逃亡する女じゃない。そうこうしていると遠くから片手を振って走り寄る影がひとつ。

「おーい!お、おま、お待たせ!」
「遅い!」
「もえ!良かった!」
「あと数分で勝ち逃げされるとこだったぞオイ!」
「獄寺に言われたくないよ、っはあ、疲れた」

しゃらん。雅な音が聞こえた。モスカの背後から現れたのは黒いマントを纏ったヴァリアー側の風の守護者だった。フードから覗く目は暗く感情がないように思える。

「よっしゃ、恒例のあれやっか!」
「あ、あれか……」
「もえ、やらない?ランボもいれて。」
「……もちろん!」

沢田君がランボのしっぽを見せた。もえは潔く円陣に加わった。隣で肩を組んだ山本がにっ、と笑った。

「もえーッファイッオーーッ!!」
「よーし!負けないぞー!」
「なんでそんな元気なの」
「え?あー、…兄弟子から釘刺されてんだ」

じゃ、とあのフィールドに臆することなく潜っていく後ろ姿はほんの少し逞しかった。

「それでは風の守護者。郷士もえvsスカルピオーネ、戦闘開始!」

バサッ。マントを取った敵の姿を見てあたし達は驚きを隠せなかった。

「相性が悪いな。どうやら向こうも銃火器の使い手だ」
「しかも二丁持ち…もえと全く同じ!!」

しかも種類まで……!こんな偶然って!バトルが始まった瞬間フィールド内に風が吹き荒れる。暴風の中で対峙する2人の間に鈍い機械音を響かせて巨大な棘が突撃した。

「あんたもウチらの出現で生み出されたんだよね?」
「余計な事は、答えない」
「なんだ、日本語喋れるんじゃん!」

四つの銃口が互いに向けて放たれた。

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