その答えに触れて | ナノ


▼ 26.最弱を平凡に

「まじなのもえさん。大丈夫なの」
「久しぶりに人生の危機を感じてる」

嵐戦後、予想外の対戦カードにびびった。もえの顔はゾンビだ。いや……リボーンに焚き付けられてどっかでなんかしてたのは知ってるけど、こいつ真面目にやってたの?リングを初っ端から返却するような女だ。暇を持て余して雑草とか抜いてたんじゃない?お腹痛くなってきた。あたしの戦いじゃないのに。

「う"おおい!風の守護者はどいつだあ!?」
「違いますううう!あたしじゃない!!」

昨日のザンザスとの一件があったからか、風の守護者と聞いた途端目が合った。チガウ。なんだか知らないけど目の敵にしないで!切実に!

「ウチだす。」

あああああもえさん、噛んでる。緊張のあまり噛んでる!!!!

「僕の学校で、なにしてんの?」

バッドエンドだ。もうやだHPが0になっちゃう。颯爽と登場したのは今日も外見のみ見目麗しい雲雀さんだ。むすっとした顔でズカズカと歩いてきては割れた窓ガラスや半壊したフロアをじとりと見回した。

「校内への不法侵入及び校舎の破損。連帯責任でここにいる全員咬み殺すから」
「あの人校舎壊されたことに怒ってるだけだー!!」
「あいつほんと学校好きな」

暴れる気満々。次に動いたやつは咬み殺すぞ、の勢いが伝わってきてあたし達はじりじりとゆっくり音を立てず後ろに後退した。どうどう。

「ちゃおっす雲雀!」
「赤ん坊かい?悪いけど今取り込み中なんだ」
「ここで暴れちまってもいいが、でっけえお楽しみがなくなるぞ」
「!楽しみ…?」
「今すぐってわけじゃねーが、ここで我慢して争奪戦で戦えば遠くない未来六道骸とまた戦えるかもしんねーぞ」
「ふうん。本当かな。校舎の破損は完全に直るの」
「はい。我々チェルベッロが責任をもって」
「そう……気が変わったよ。じゃあ君で鬱憤を発散するしかなさそうだね」

喜々とした顔がくるーりと旋回してもえに向いた。にやっ。うわはあ。嬉しそう獲物を見つけて喜んでる。

「なんでウチー!?この中で最弱なんですけど!弱いものいじめはしないんじゃなかった!?」
「君を蹴ろうが殴ろうが僕の自由じゃなかった?」
「それ修行だったからだよ!?」
「ジャストナウ」
「今ここで死ねってかー!!!」

後ろから首根っこ掴まれて明日が対戦だというのにさっさと連れて帰ってしまった雲雀さんに誰も反応する者はいなかった。目が点になる。

「ザンザスが言ってた事だがなぁ雪女」
「……え、それあたしのこと?」
「鞍替えするなら早いとこしとけぇ。ぬるま湯に浸かれば浸かるほど。どうなるか分かってんだろうなぁ」
「嫌にスカウト熱心ですね。あ、もしかしてそっちにいないんですか雪の守護者」
「はっ。年上の忠告は聞くもんだぜ」

割れた窓からじゃあなあ、なんて挨拶飛ばして帰っていった。ヴァリアーのボスとNo.2から勧誘された。自分がそんなに強いとは思わない。何を見て勧誘してるんだろう。敵なのに。



「って訳なんだ、だから明日こいつの戦いになる。手加減してくれ恭弥。」

ディーノさんグッジョブ。あなたが来てくれなかったらぺしゃんこになるところでした。呼んだのは雲雀だったらしくディーノさんが来るまでの間を持て余した暴君はウチで暇を潰していたらしい。なんて理不尽。

「ワオ。そんな大捕物してたの。ちまちまやってないで皆殺しにすれば早いのに」
「だから、それじゃ争奪戦の意味がねーだろ!それと、妹分をもちっと可愛がってやれって」
「可愛がる?可愛がってるでしょ顔が嬉しくて歪むくらい」
「今しがた顔にめり込んだトンファーのせいですけど?」

明日の戦いに響いたらどうしてくれるつもりだ。

「君、対して変わってないのにやるつもりなの?バトル」
「だって……」
「君は穏健派の極道?」
「いや……」
「違うな。君を除いては過激派だったんだろうね。」
「!なんでわかるの?」
「似たようなものを見ているからさ。何のためにそれ、あげたかわかってる?」

最弱を平凡にするためだよ。

「弱者が土に還るのは当然だ。僕は指南なんてしないしする気もない。ただ、なんとなく気が変わったから君にこれをあげた。」

草食動物に鋭利な牙を渡してあげただけ。

「後はひとりで足りない頭でも捻って、やってみれば。」


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