その答えに触れて | ナノ


▼ 24.切り裂き王子

「髑髏さん、骸様ってどんな人なの?」
「どうしたの……?」
「あ、ただの好奇心なんだけど……ってちょっと城島君。それあたしが髑髏さんに買ってきたお菓子なんですがー」
「うっへー!修行つけてやってんの誰だと思ってんら!」

黒曜ヘルシーランドに今日もお邪魔した。髑髏さんに買ってきたアイスやお菓子はものの数分で城島君が漁って殆ど食われた。食いしん坊め。

「骸様は……恩人……」
「へえー。恩人かあ。城島君はパイナップルしか言わないから南国しか印象ないんだよね」
「紅林……一度会ってる……」
「へ!?会ってない会ってない!そんな頭忘れるわけないもん!」
「どー考えてもお前じゃねーよ。あん時の……アレは」
「は?」

城島君が空になった菓子袋をあたしの鞄に突っ込んだ。嫌がらせがゴミは持ち帰れとかいうパターンか。

「さっさと今日もやるびょん!思い出したら腹立ってきた!」
「城島君のスイッチって分からなーい」
「立てっつの!」

黒曜のメンバーって、なんだか馴染みやすいんだよね。緊張しないっていうかなんていうか。気にしないなんて言ったものの、やっぱりあたしはあたしな訳で。ヘタレ当主な訳で……。

「うわあああもういっそ分離してしまえー!」
「いきなりなんらお前!てか!なんか落としたびょん!」
「あ、これ大切なものだ。人にあげるやつ」
「ちゃんと仕舞っとけっつの!」
「犬……紅林にはとてもお兄さん……」

犬お兄さん、誕生の瞬間だった。お互い顔見合わせて嫌な顔した。



「あの時計の針が11時を差した時点で獄寺隼人を失格とし、ベルフェゴールの不戦勝とします。」

獄寺が来るのは大丈夫、想定内。ギリギリに出てくるという内心ドキドキの登場も……大丈夫、想定内。良かった……事故とかそういうので死んでなくて。

「獄寺隼人、いけます」
「獄寺君!」
「約束の時間に間に合いましたので勝負への参加を認めます。」
「焦らせやがって。元気そうじゃねーか。寝坊か?」
「んなわけねーだろ!」

「今宵のフィールドは校舎の3階全てです。勿論この棟と繋がる東棟も含まれ、廊下だけでなくこの階にある全ての教室を含みます」

ハリケーンタービンが四方八方から火を吹く……ではなく風を吹くという。

「そして今回は勝負に時間制限を設けます」
「試合開始から15分後にどちらかが嵐のリングを完成し所持しなければハリケーンタービンに仕掛けられた時限爆弾が順次爆発し、この階を全壊にします」
「そ……そんなっ!じゃあ勝負がつかなければ2人とも……」
「死ぬでしょう。2人とも守護者には相応しくないということです」

ベルフェゴールも獄寺も大切なボンゴレの人間。嵐のリングを最悪壊してもいいなんてことはない。チェルベッロの後ろから湧いたように出てきたのはシャマルで。実は初対面だったりする。

「おー、お嬢ちゃんのどっちかがハヤトの言ってた子かなぁ?んーどっちかなぁ?」
「シャマル!何してんだよオメーは!」
「ほら、バリーンて音がしたからさ。」

獄寺は嫌がったけど、結局円陣は組むらしい。もう慣れてきた。あ。そうだ。

「獄寺、ちょっと待って」
「んだよ」
「これあげる。これね、並盛の神社でちゃんとあたしがお願いして買ってきたお守り。ちゃんと習った通りお参りしたから、大丈夫。」
「は、はあ?」
「なにも掴んでないよりはマシだと思って」
「これ持ってやり合えってか!馬鹿か!」
「馬鹿じゃないって言ってるじゃん!この下り何回目!」
「それでは両者中央へ来てください」
「……ちっ。こーすりゃいんだろ?おら。満足か」

リングをかけているチェーンとは別のネックレスにお守りの紐を通した。爆風で飛んでいっても知らないよ?て言えばお前の邪念篭ったヤツが簡単に飛んでくかよ、と返された。山本に教えて貰った神社のお参り。神様なんて信じてないけど、なにに縋ればいいのかわからなかったから。ゆらゆら胸元で揺れる赤いお守りが獄寺に似合わなくて少しおかしかった。

「へー。カノジョ?」
「ちげーよ。あんな馬鹿」
「いーよ隠さなくてもさ。にしても、お前さ。肩に力入りすぎじゃね?」

獄寺は……なんだかんだやってのけるけど、今回の筋道では敗北だ。もし勝つ未来があるなら。獄寺はただじゃ済まない。モニターに映し出される映像の中は凄まじく、まさに嵐の中。天才の仕掛けた罠に翻弄される。

「死ぬほど簡単な話しさ。流れる風の気流を読んで、目標ライン上にそっとナイフを添える」

…居たな。獄寺みたいに忠義を尽くして……死んだのが1人。あの人は……死ぬべき人間じゃなかった。別宅に女まで囲って、2人の将来を夢見ていた男。結局、忠義も尽くし終えたけど夢は叶わなかった。どちらかを得ればどちらかを失う。

「嵐の守護者の使命って知ってる?常に攻撃の核となり休むことのない怒濤の嵐。」

あたしなんかの命令で、やすやすと死ぬなんて。なんで他人の為に死ねるんだろう。どうして数えるまでしか声を聞いたこともないあたしの命令に従ったんだろう。

「果てろ!!」

そんな昔を思い出している内に獄寺のボムが相手に当たった。素早く確実に届いたボム。ロケットボムだ。「生き残るために習得した技はしぶとく決まる」修行の成果だとシャマルは笑った。

「流しちゃったよ……王族の血をおお!」

目覚めた切り裂き王子。

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